大野

her/世界でひとつの彼女の大野のレビュー・感想・評価

her/世界でひとつの彼女(2013年製作の映画)
4.3
オススメだが、1人で観ること!笑

2013年当時に見ても楽しめたと思うが、
今初めて観る人の方が、
楽しめるのでは?っていう、
かなりレアな映画な気がする。

というのも、
テーマが、人工知能と恋をするという、
割とありがちなものながら、

世界観と技術進歩の未来予測が、
驚くほど的確というか、
まさに現代の数年後が見れる。

後から公開が2013年って知って、
心底驚きました。
つまり制作は、それよりも前。
(ほぼ10年前。
 ちなみにSiri初代は2011年10月)

SFチックではなかったのが、とかくデカい。
繰り返しになるが、
本当に現代の数年後の雰囲気というか。

(PCもこの夏に出た、
 新型iMacっぽいデザインだったし)

サマンサが躰を気にしている時は、
人が前を歩いている感じだったのが、

OS同士で繋がり始め、
サマンサが成長していく過程で、
セオドアが一気に置いていかれる感じというか、

シンプルな寂しさがすごい。
人の不完全さを露骨に理解させられる。


セオドアは元妻から、
人の感情が理解できない等と罵られていたが、

手紙の件で随所から認められている通り、
感情は、並の人以上に理解していると思う。

ただ、理想が高いことと、
言語コニュニケーションに頼る部分が多く、
だからこそ元妻とは合わず、
元妻にはそれが理解ができなかったのかなと。

(テレフォンセックスしてたのも、
 おそらくそこから。)

そしてサマンサとは言語のみのため、
相性が良かった。

AIなこともあり、
セオドアの理想に、
合わせていってもくれる。

しかしサマンサも、
表面的な感情こそ、
声色などから理解可能だが、

倫理観(心)から生まれる感情は、
まだ理解できなかった。

人の倫理観で伝えた、
“ありのままで良い“ というのが、

プログラムのサマンサにとっては、
文字通りの意味を持っちゃうとは。。

複数との関係の暴露を、迷ってこそいたが、
すでに実行されていることから、
吸収という、
“プログラム“が優先されるというのが、
この時点のAIの、人真似の限界とも分かる。

(並列思考が可能になったという、
 人が辿り着けていない、
 進化かもしれないが。)

しかし、サマンサはありのままゆえ、
本当に幸せそうで、
それを “言葉で“ 説明してくれたおかげで、
セオドアは気持ちを知ることができ、

同時に元妻の言い分、
つまり自分の身勝手さを理解し、

最後、
“初めて自分の気持ちで“
手紙を送るに至った、

ということかなと。

(手紙書籍のタイトルが、
 [Letters From Your Life]となっており、
 全て代筆だったことから)

随所に、
元妻との思い出シーンが挟まれていたが、
その穴を埋めていたのがサマンサで、

サマンサとの別れを通じて、
元妻とも、ちゃんと別れる区切りがついた、
っていう終わりも、スッキリしてて好みでした。


サマンサの声は、
スカーレット・ヨハンソンさん。
声のみの出演だったが、
放送映画批評家協会賞助演女優賞にノミネートされた。

確かにあの、
最も人に近いOS感は見事だったと思う。


個人情報どうなってるとか、
ツッコミどころこそいくつかあるものの、
人に近いOSとしては間違ってない気がするし、
おそらく何がダメか伝えることも、
このOSとの付き合い方なのだろうなと。

AIとの共生について、
他にはない深さを感じた作品であり、

代筆書籍が出版されたら、
依頼者困るんじゃね?
ってレビューを見て、
だよなぁ、、とも思った一作でした。笑
大野

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