Arlecchino

her/世界でひとつの彼女のArlecchinoのレビュー・感想・評価

her/世界でひとつの彼女(2013年製作の映画)
5.0
学者、ディラン·エヴァンズによると、自らを様々に組み替え、その中で(自らを)進化させていくようなロボット技術は既に生まれているという。

一方、人間の感情は、学術的には進化の産物だとされている。我々は生物として適応し、生き残るために、怒り、恐怖し、恋愛し、喜びを感じるという理論だ。

では、ロボットが自らの進化の中で感情を持ってしまったらどうだろうか.......?


この作品は、OSが感情を持って人間に接する、近未来の話。SFとしてだけでなく、とても哲学的かつ身近なテーマを扱ったものでもある。

長時間友達や恋人と電話をしたり、テレフォンセックスをしたりしたことがある人は、この映画全般の雰囲気に共感できるものがあるだろうと思う。
あるデバイスを通しての会話は、対面のコミュニケーションとは異質のものでありつつも、必ずしもそれに劣っているとは言えない。
そこに機械と人間の対立構造をみて、嫌悪するだけではコミュニケーションの本質は決して見えてこない。

スマホ常用の日常化、主人公の手紙の代筆という仕事、安直なテレフォンセックス、上辺だけの婚活、そうした事柄が映画の前半に描かれる。
こうしたことは先進国の都会に住む現代人にはさほど珍しいようなことではない。そんな私たちの生活の延長にどんなことがありうるのかをこの映画は示唆してくれる。ただ、それはいわゆる保守主義者がいう倫理の崩壊というような愚直な結論ではない。もっと、私たちが自分自身に動揺するようなリアリティが提示されるはずだ。


このような深い示唆に富む映画に私は満点をつけることにしてる。
スパイク·ジョーンズの傑作。