にんにんにん

her/世界でひとつの彼女のにんにんにんのレビュー・感想・評価

her/世界でひとつの彼女(2013年製作の映画)
3.5
成長の遅い人類と、恐るべきスピードで進化するAIが、シンギュラリティの前後一瞬、感性と知性レベルが交わった瞬間に産まれたわずかな時間の恋を描いている作品。
AIを敢えて極めて「人間的」に描く一方で、恐るべき能力を日に日に開花させていくさまを見せることで、対等な精神の交歓が間も無くできなくなる日が訪れること、謂わば約束された別れの予知を静かに表現していて上手いな、と思った。
途中「結局、肉体のある人間は素晴らしい〜みたいな映画だったらクソだな」と思いはじめたが、そこは捻くれ者スパイクジョーンズ。人生を変えるほど誰かを愛したところで、人に素直に感謝を述べられるようになる程度の「アップデート」しかできない、という人間の限界と寂しさを感じさせられた。こういうチャーミングな皮肉表現は個人的に好き。
OSとの恋が「社会的にに受容された」か否か、とても微妙な世相に設定していることもリアルでいい。ふわふわした映像の可愛い映画風でいて、近い未来起こるかもしれない出来事をシビアに伝える映画。