Hondaカット

her/世界でひとつの彼女のHondaカットのレビュー・感想・評価

her/世界でひとつの彼女(2013年製作の映画)
4.3
86点。スパイク・ジョーンズ監督が描く、コンピューターとの恋物語@近未来。何よりも美術・衣装・そしてライティング含む撮影の画づくりがとても美しくエモーショナル。音楽のセンスもやはり違うな、という感じ。それだけでまずもっていかれる。

ヒロインが声だけのOS、その設定がとてもいい。それ自体は【話の装置】なので、例え架空の未来の話だとしてもそこに現実性は全く無い。でもその【装置】の中でやりたかったのは、心・感情の成長にしぼった「言葉」に関する話、なのかなと思った。主人公が手紙代筆業であることもそうだし、基本的には会話劇な部分が多いのでより鮮明に現れる。

人は、恋愛、というか大きくは人間関係の中で、言葉によるコミュニケーションで産まれるもの、成長するもの、傷つくもの、癒されるもの、がたくさんある。設定的にはOSだけど、その、『人の誰かに対する想い』にたいする監督の肯定的な優しさをとても感じたし、スパイク・ジョーンズの画づくりや音楽やトーンは、その優しさを描くための道具でしかないんだな、と。決して映像派の監督ではないのだ。

特にOSのサマンサが作った曲を流しながら街を散策するシーンの、画ではなく感情の美しさ(OSなのに!)、その普遍性を描いている演出に心を奪われた。

近未来感のほど良さ加減もとても好みだったし、画のフィルムではないデジタルので新しい質感の優しさ柔らかさをここでも追求している映画人たちがいる!と嬉しくなりました。

しかし、あえて言うとパソコンとしてはあれダメOS。セクシーなスカヨハの声で、拗ねたら応答しないとかって、機能してないでしょ。
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