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her/世界でひとつの彼女のmazdaのレビュー・感想・評価

her/世界でひとつの彼女(2013年製作の映画)
4.5
間違いなく今年1番のなめてましたシリーズ。
今まで何度もすすめられてきたのにあらすじの段階で主人公にひいてしまってなかなか見る気になれなかったの本当に謝罪したいほど素晴らしかった。
なんたってこの主人公の男性が恋した相手はリアルな命をもたない人工知能OS。いわばもう少し進化したsiri。いろんな形の恋があるとはいえそれだけ聞くと生理的な拒否反応がでてしまう。物語として成り立っても私がそれにときめくことが想像できなさすぎて。

でも映画のなかの空気全てがリアルで想像をはるかに越えるほど異常に入り込めてしまった。恋愛映画っていかに自分のことかのように感じさせられるかが重要と思って、ただ人の経験をみせられるような恋愛映画ではたくさんある恋愛映画のひとつにしかなれない。この映画は誰も経験したことないような物語でありながらみんな感じたことあるようなきもちを思い出させるように感じさせる。

かなり最初の段階だけど『時々思うんだ。僕は一生で味わう感情を味わってしまい新しい感情はもう湧かないかもと』という主人公の内で感じるきもちを表した言葉に激しく共感し一瞬でこの人のぽっかりとあいた心がみえたみたいに全部理解したきもちになってこの人を今すぐハグしてあげたいような、孤独感をシェアされた感じだった。
この感覚は『ニンフォマニアック』の"宇宙でひとりぼっちになった感覚"に近い。恋愛感情に限らずあらゆる幸せな瞬間を味わったあとの異常なまでの孤独感。すごく楽しくて幸せだったその絶頂をこえたあと。その瞬間があまりにも幸せすぎて、それは人生で感じる心地よさ全てを使ってしまったほどまでに感じるから、ここで感じたほどの幸せに二度と出会えない気がしてすごく空っぽになる。すごくすごくわかる感覚だからわかった瞬間にただその1言だけに涙がとまらなくなった。
実際そんなわけはない。どんな失恋をしてもどんな失敗をしても、生きてる限りその喜びには何度だって出逢える。そういう喜びにまた出逢うのって基本的に偶然が結びつけるものだから、そんな幸せなきもちをまた手にいれられるかなんてまして空っぽになった人間には到底想像もできない。実際主人公の彼は新しいOSを手にした時、まさかosの声の彼女に恋をしてこんなたくさんの感情を抱くことになるなんて考えもしなかったこと。

好きな人を五感全てで感じることがどれだけ幸せなことか。その人を見てその人に触れて、その人の匂い、その人の声、口が触れて感じること。今そこにいるという感覚的に感じる相手の空気感。彼はこの五感のほぼ全てを奪われた状態で恋をしている感じ。声を聞いて愛することと声で愛を伝えることしかできない。好きな人との間になんらかの障害を感じたことがある人なら共感せずにはいられないだろう。その障害がどんな些細なものだとしても本当に好きになればもっと手にしたいというきもちが普通だからどんな些細なものもそのきもちを邪魔する障害に感じてしまう。そして何故か障害を苦しく感じながらそういうものがあったほうがより一層好きが強まる。
非リアルな存在を愛しているという最初の固いイメージはとうになくなって、彼と彼女のリアルな感情にただただきもちがゆさぶられた。

そして映画事態の方向性もとても好き。いろんな形の恋愛があるしそれはその人の自由だし、その人がそれで幸せならそれを壊さないでほしいと思う反面、これが現実になったとき、みんな手や目で触れる、感じるということがなくなるのかと思うとそんな世界は苦しすぎる。この映画が提示したものは決して良いとも悪いとも述べず、私の答えもどちらともいえない。いくらリアルな感情をもってるっていったって感情もプログラムされてるといったらどこまでが自分という存在によって生まれた新しい感情なのかわからない。そしてそういう疑いがある以上それ以上の愛はない。難しい。苦しい。

それでも彼女の存在は彼の沈みかかった人生を大きく変えてくれた、忘れられない人には変わらない。起きたくない憂鬱な朝に、さあ起きて頑張って!っていう言葉があるだけでどれだけ力になるか。落ち込んでるときのふとんほど重いものはない。例え好きな人じゃなくてもその一歩を踏み出させる背中を押してくれる人は憂鬱なきもちを少なからず晴らしてくれる。自分が求めるときにいて、求めないときにはいない。間違いなく完璧な生活リズムが生まれる。
でも私は好きな人には完璧でいてほしくない。自分の望みと相手の望みが決して毎回噛み合うわけではなく、少しちくはぐしてて、嫌なとこがみえてしまって、自分が望む100%の関係にはなれないほうが、もっとそれを目指して築いていきたいと思う。と考えると結局私の中ではありえない恋愛観だなあという結論になってしまう。

それでも彼の感じていたきもちは本物だし、その関係性は見ていてとても美しく思えた。スカヨハの声の破壊力がすごすぎる。男女関係なく感じさせにくるこのフェロモンもプログラムされたものなのかと思うともうどうかなりそう、どうにでもなれ、、ってきもちになる。
私だったら絶対異性は選択しない。そういう感情が生まれることを恐れちゃうのが本音。同性を選択して秘密のベストフレンドであってほしい。
何度もみたい認定。お気に入りの恋愛映画にいれます。感じることが多すぎる。好きすぎる。無理。
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