ninjiro

劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 新編 叛逆の物語のninjiroのレビュー・感想・評価

4.6
あの丘の上でふたり話したこと。
私だけが知ってるあなたのこと。
あなたが知ってる幾つかのこと。
話したくない私は放したくない。
私が少し知ってるあなたのこと。あなたの絶望を予め知っていたら、私の中の永遠はちゃんと測れたんだろうか、私の絶望をあなたが知ってくれたら、私はそれで満足だったんだろうか。本当の救いって、ほんとなんなんだろうね。夜更けがやってきて、この章が終わる。きっと今、ピリオドを打てば終わる。それが終わりだなんて思っている人は、他に誰も居ないとしても。
歓び、哀しみ、慈しみ、憎しみ、約束、裏切り、生きる意味、生きる痛み、全てが初めて会ったような顔をしながら繰り返されるシーソーゲーム。いつか誰もが大人になれば気付いて敬遠するこんなゲームを繰り返す痛みは、きっと私以外に理解はできない。手の焼ける、只の駄々っ子のように、もしかしたらあなたの瞳にさえ映るかもしれない。
どんな時もひたむきに願っていた。もう一度あなたに逢えたらどうするんだって、渦を巻くその祈りは、いくつも描いた未来は、胸に咲いた紅い花、枯れたその後には一体どこへ行く。雨に打たれて濡れ、風に吹かれて揺れ、朝日を浴びて、夕景を眺めた。小さくてかわいいあなた。あの丘を埋め尽くした花々、その一つ一つになんて誰も語りかけたりなんかしない。あんなに必死に咲いたその一つ一つが私の、振り返れば誰の目にも忌み嫌われる只の欲望にしか見えないだろうから。

幾らでも繰り返すこの夢は、夢っていうほど虚しいものじゃない。幾ら繰り返せばこの夢は、取り返しのつかない夢としてあなたに触れてもらえるんだろう。
辿り着いた孤独のドアの向こうには、また耳をつんざくような静寂が拡がるばかり。
本当のことなんてここには一つもない。幾らでも偽って思いつく限り、全ての希望をあなたに。全ての最悪は私のもの。
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