晴れない空の降らない雨

劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 新編 叛逆の物語の晴れない空の降らない雨のレビュー・感想・評価

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 シャフト(新房)と虚淵玄という苦手なもの同士の組合せだったため、知名度にもかかわらず長らくスルーしていた作品。「ザ・2010年代を代表するアニメ」なわけだが(といっても2011年だが)、そういう観点でみると「この辺のループものブームが『君の名は。』や『僕だけがいない街』につながるわけか」とか「そういや百合もこの頃からか」とか色々と興味深い。
 
■ループ
 ループ設定とゲームの相性がよいことは何となくイメージできると思うが、ヒロインの数だけ話が枝分かれするギャルゲは、このギミックを組み込んだ作品が多い。などと見てきたように言いながらKey社の作品しか実際にやったことはないけど、当時はかなり驚かされた。この辺が2000年代に京アニにアニメ化されて、そういう流れを汲んでいるのかなと。 
 ちなみに虚淵は、おそらくエロゲ出身ライターで最も成功した人間だろうが、「どっかで聞いた設定だな」と思うことが多くて苦手。ただ、この作品に関しては、『ぼくらの』を否応なく連想させること以外は、そこまで気にならなかった。単に自分が無知なだけかもしれないが。

■百合
 百合に関しては、深夜アニメが男性主人公(ひいては恋愛要素)を排除する方向に行ったのがこの頃のような気がするし、トレンドだったかもしれない。ただ、百合についても、そういう日常アニメの動向とは別に、エロゲからの流れがあると思う。本作みたいに性愛まで行かないが正常とも言いがたい執着心がある場合、単なる男性排除もののきらら系四コマ漫画やそのアニメ化作品とは関連づけにくい。
  
■ヤンデレ
 「ヤンデレ」がこの劇場版で加わった要素になるわけだが、これに関しても、『ひぐらしのなく頃に』とか『スクールデイズ』といったノベルゲーに由来する成分だろう。
 
 思い浮かんだことを適当に並べてみたけど、実際のところノベルゲー(ほぼエロゲだが『ひぐらし』『CLANNAD』等の例外もある)が輝いていたのが2000年代中盤くらいまでで、その遺産が深夜アニメに波及していたのが2010年代の頭くらいまで、と整理できるのではなかろうか。オタトーク全開になってしまったが、自分自身は個々の作品にあまり触れてこなかったので、てんで的外れの可能性が高い。詳しい方にぜひご教授願いたい。
 
 で、本シリーズおよび映画だけど、ぶっちゃけシャフトと虚淵にしては面白かった、程度。あまりコメントすることがない。シャフト演出は相変わらずだるいけど、たしかに完成度はとても高い。スタッフワークがぴったりとかみあっている感じが伝わってきた。この劇場版はちゃぶ台返し的なオチこそあれ、シリーズで真っ先に退場したマミの活躍ぶりとか、さやかと杏子の共闘とか、全体的にはファンサービスという印象のほうが強かった。マミとほむらのバトルシーンはすばらしい。