涼

インターステラーの涼のレビュー・感想・評価

インターステラー(2014年製作の映画)
5.0
 クリストファー・ノーランシリーズ第3弾。

 素晴らしい。

 滅亡に向かう地球の人々を救うため、父クーパーは10歳の娘マーフィーを残して宇宙へと旅立つ。娘は当然反対するが、父は「おまえを愛してる。だから必ず戻る。」と約束する。
 本作は、父がその約束を守ろうとする物語である。

 娘は荒廃した地球、父は宇宙船にいて会えない。娘はどんどん年を取っていき、父と同じ年になった誕生日に初めて父宛にビデオメッセージを送る。
 そこでマーフィー(ジェシカ・チャステイン)は、父に恨み言を言い、クーパー(マシュー・マコノヒー)はそれを見て泣き崩れてしまう。
 このシーンが本作の一番のハイライトである。
 ジェシカ・チャステインの、諦めてはいるもののどこか期待も持っているかのような表情と、マシュー・マコノヒーの、最愛の娘に何もしてやれない嗚咽が印象的で、この二人だからこそ生み出せた迫真の演技である。
 このキャスティングが素晴らしい。二人ともアカデミー主演賞受賞者で演技力があるのは当然なのだが、本作での演技ももっと称揚されて良い。

 本作の製作総指揮兼科学コンサルタントが、キップ・ソーンという人である。2017年にノーベル物理学賞を受賞したそうで、本作の隅々まで彼の知見が生かされているらしい。
 ブラックホール、ワームホール、5次元空間など。この分野は全く分らないので、さらに解説動画などを見て、知識を深めることが出来た。
 荒唐無稽でない、最新の物理学に基づいたSFという点でも、本作は出色である。

 脚本のジョナサン・ノーランの発想が凄い。全てはここから始まっているわけだから。ただ、当初は移住候補の星に中国人の基地があったとか。
 それをマン博士の話に替えたのは兄・クリストファーの判断だったのだろうか。中国のままだったら、傑作にはならなかっただろう。いい判断だ。

 本作はあらゆる要素が水準を超えていて、稀に見る傑作となっているが、ハンス・ジマーの音楽にも言及しないわけにはいかない。
 クーパーとマーフィーの強い父娘愛を感じさせる曲調が良い。

 Netflix視聴者の方は、5/31までの配信なので、未見の方は何があっても見るべき。



 
涼