Takaomi

インターステラーのTakaomiのレビュー・感想・評価

インターステラー(2014年製作の映画)
4.3
映画ファンのほとんどが、名作だと認めるクリストファーノーランの代表作のひとつ「インターステラー」

これを観なければ映画好きとは言えないほど素晴らしい内容だったし映像美であった。

この映画が他のSFと違うのは、ヒューマンドラマとしても良くできているからだと思う。まさにヒューマンSFドラマ。

近未来、環境破壊などによる異常気象で自然災害が起こり食糧難に陥いってしまう。まさに地球と人類にとっての終焉が迫っていた。

人と人が顔を合わせ挨拶を交わすことや協力し合い支え合うことすらいつのまにか忘れていて、人々たちは、日々食べること一日一日を生きることに精一杯で空を見上げて希望を抱くことや祈ることすらなくなった。

そんな中NASAが秘密裏に計画していた惑星移住ミッションを遂行することになった元宇宙飛行士のクーパー。
果たして彼は計画を成功させ人類や愛すべき家族を救うことができるのか。

序盤からノーラン監督の演出のこだわりがシーンの中で所々に散りばめられている。

まず全体的に言えることが、ラストはSFなので現実味のない展開になるけれど、辻褄が合うリアルさを中心に繊細に描いているということ。

地球と人類の終焉といえば、地殻変動や氷河期や巨大津波、隕石などの非現実な天災などを想像する。

今回は環境破壊などで砂嵐のような竜巻が頻繁に発生したり、実際に地球内でおこる自然災害が原因で食糧難に陥いり植物や酸素までもが不足するので現在の地球をみているようなリアリティーを感じることができる。

そしてこの作品で特に重要な部分をあえて、ポルターガイストというわかりやすい現象に例えることやコンピューター類ではなくて本が物語に関係してくるところ、情報社会ではなくて農業化社会やアナログを中心とした世界観が非常にわかりやすく、皮肉を込めているともいえる。

監督がネット嫌いというのもあるけど、この映画で出てくるのは必要最低限のものばかり、R2-D2のような人工知能ロボット、ロケットの新型や、永眠カプセル、数少ない登場人物、キップソーン博士の理論上あり得る宇宙構造どれもが見所です。

宇宙理論を中心とした非常に難解な映画ではあるけれど、わかりやすい人間ドラマや演出のおかげでSFが苦手な人や老若男女にでも見やすい、感情移入しやすい作品になっていると思います。(ちなみに僕も、地球外の空間の存在は考えられないぐらい宇宙物は苦手です。)

この映画は、未知なる世界への希望や終わりのない冒険心を描いているけれど 個人的に人類に対する警告も描いている気がしている。

地球が奇跡の星というのは言うまでもないが、その奇跡のレベルが想像を超えている。
太陽系は恒星からの影響が少ない銀河の端に位置していることや、太陽に近すぎず遠すぎない温度や気候の環境、地球の程よい大きさ、自転スピード、木星や月などの惑星が害を及ぼしかねない天体たちをひきつけて守ってくれていたり。

こうして奇跡の星地球が誕生する確率は25mプールに時計の部品を投げ、水流だけで時計が組み上がる確率と同じで、いわば人類や生物にぴったり合った惑星は地球以外には考えられないこと。

実際に水の惑星やマン博士の見つけた氷の惑星、エドマンズの惑星は地球には到底及ばないほど住める環境は整っていない。

だからこそ奇跡で作られた地球を人類が壊し、車を乗り捨てるように別の星に乗り換えていいのだろうか。
誰も自ら家族や住居を壊すものはいない。人間中心主義や利益優先主義の時代が戻ってきている中で、協力し合い支え合いながら地球という家を、家族という愛を、幸せをこれからも守るべきである。

そして重力の時間軸のずれが本当に恐ろしい。
人間がもっとも大切にしてきた時が思い出が一瞬にして塵のように消え去ってしまう。

人間たちはクーパー家の 時間 いや、愛という宝石を奪った。
父親と子供たちの人生もろとも殺してしまったのだ。

母親のいないトムやマーフにとって父親の存在はどれだけ大きかったのだろう。考えるだけで胸が苦しくなってくる。

誰もがもう二度と会うことはできないと確信したとき一つの奇跡が起こる。
それは愛という神秘な力である。時にそれは時間も空間も超えられる。

愛こそがすべて。それさえあれば他になにもいらない。
幽霊からのメッセージは、愛する人からのメッセージ。

親は子供の記憶で生きている。子供の未来を見守る幽霊である。
今になってその言葉の真意が分かる。

まっすぐでまぶしいほどの愛が確かにある。それは私たちにも。 
    
宇宙に希望を求め夢を追及するのは素晴らしいことだし、これからも続けてほしい。だけど宇宙に助けを乞い、ひとつの家族の人生を奪ってはならない。

欲を言えば、娘との出会いとそして別れのシーンがもう少し欲しかったけれど、この作品に何もいうことはない。愛がすべてだから。
Takaomi

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