おけい

サタンタンゴのおけいのレビュー・感想・評価

サタンタンゴ(1994年製作の映画)
4.8
死ぬまでに観たい映画1001本 880番

1人有給休暇の日にハンガリーの巨匠タルベーラの『サタンタンゴ』鑑賞を早朝より決行しました。7時間18分ですから…

7時間18分にしてわずかに約150カット。驚異の長回しは冒頭から既に始まる。ハンガリーの田舎村。何も無いただの日常風景にさえ圧倒される画の強さ。全編雨と泥。ゴミが舞い上がる風の中、歩き続ける男達の後姿。無駄にカッコいい。これならたとえ映像を眺めてるだけでも7時間18分は乗り切れると最初に確信しました。タルコフスキーの映画にも共通するのですが。映像のマジシャンですね。

明らかに不貞行為に及んだ人妻の描写がハッキリ描かれず、全て終わった後の行動を見せ想像を掻き立てる。いろんな人の視点を通して同じシーンが繰り返されるのもゾワゾワした。

暗い寒村。金ない、仕事ない、希望もない村人達が金を盗み夜逃げしようと画策している。そこに死んだはずの男イリミアーシュがやってくるという噂。そわそわしだす村人達。イリミアーシュはいったい何者か。悪魔か?救世主か?というストーリー…。7時間以上もかけるストーリーという程のものでもないのが分かります。何故こんなに長くなければいけなかったのか?

タルベーラのインタビューに答えがありました。

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収益のため、市場のためにつくっている作品でないのであれば、やはり人生というものを見せたいわけであり、そのためには自然や時間、空間というものをしっかり捉えなければならない。
その結果、『サタンタンゴ』は7時間以上に及ぶ作品になったのです。そもそも、映画は1時間半くらいの尺であるべきだなどと、誰がいったのでしょう。そんなロジックに対して私たちは(中指を立てながら)ファックオフだと考えた結果、この長さの作品になったんですね。

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なるほどね…無駄なようで何一つ無駄がない映像表現ってわけね。どこかの考察ページでも書いてあったのだが…ってことは我々はどれだけ、知らないうちに人生の中で無駄な時間を費やしているのかってことになる。それを思うと急に怖くなり、はっとしてしまった。

搾取する側と搾取される側の構図が分かりやすく描かれているが、ピラミッド社会の構図は知らず知らずのうちに我々の中にも潜んでいると思う。

最後にイルミアーシュのイケメンぶり、カリスマ性が凄くて、初登場した2章以降は早く出してくれと思いながら観てました。叶わないが劇場で観たかった。
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