このレビューはネタバレを含みます
2回の休憩を挟むものの、7時間18分という今まで体験したことがない作品に好奇心と不安を抱きながら劇場へ。タル・ベーラ監督の作品は『ニーチェの馬』のみ鑑賞済み。
序盤は寒村に住む村人たちの怠惰で厭世的な生活の描写。抜け出したいと心の底では思いつつもその術を知らず、ただ安酒を飲み、現実を逃避しながら長く退屈な時間をやり過ごす。そしてこの何も起こらない退屈な時間は意図的に観客も付き合わされることになる。
中盤、酒場で村人たちが一心不乱に踊るタンゴ。ひたすら繰り返される単調なリズムに段々うんざり。刹那的に現実を忘れたいがために踊り続ける大人たちの姿を見れば、そりゃ誰でも絶望的な気持ちになる。
終盤、イリミアーシュが帰還。一回り以上離れた若者にすがるしか選択肢がない無力な村人たち。村人の未来について雄弁に語るその青年は救世主かそれとも悪魔か。
荒廃した村に降り続ける秋雨とぬかるんだ道が村人たちの鬱々とした心情を表す。座席にじーーっと座っている状態と相まって、意図されたうんざり感を体感した。リアリティを追求した好みの作品ではあった。
ただ、問題の少女と猫のシーンは他の方のレビューにもあるように終始不快な気持ちになった。そんなところにリアリティを求めたくはない。