がんびーの

サタンタンゴのがんびーののレビュー・感想・評価

サタンタンゴ(1994年製作の映画)
4.1
もう一度観たいとは思うけれど、もう一度観れるとは思えない。
唯、7時間を超える超長編映画だったにも関わらず、最後にはもう少し観ていても良いなと感じた。多分それがタル・べーラの一番の魅力。

経済的に行き詰まり、終末的な様相を纏っているハンガリーのある村。降り続く雨と泥に覆われ村人同士も疑心暗鬼になっていく。そんなある日、活気のないこの村に、死んだはずの男イリミアーシュが帰ってくる。彼の帰還に惑わされる村人達。イリミアーシュは救世主なのか?それともサタンか?

6歩進んで6歩戻る。それはまるでタンゴのように。映画は12章に分けられており、前半後半で6章ずつの構成になっている。前半で物語が進んだと思ったら、後半でまた元に戻っていく。輪のように、円のように繋がりをみせ、永遠に途切れることのない終焉を観ているよう。設定上はハンガリーのある村となっているが、全てを削ぎ落とした様な粗末な情景は、人々の想像の中にある普遍的な世界の終焉を描いているよう。昼なのか夜なのかもわからない漆黒の世界は視聴者を傍観者へと変えていく。彼らの傍らでこの世の終わりを少し体験したようだ。

438分という長さでありながら、カット数はわずか150。ほぼすべてのシーンが長回しで、観る物を悟りの境地へと誘う。長回しだからこそ画中の構図が強調される。何気ないシーンにも取り憑かれたように見入ってしまう。牛が群れとなって歩き、馬が人のいない広場を駆け回る。美しい。

唯一の難点はお尻にできものができたこと。

ぜひぜひぜひ
がんびーの

がんびーの