フリーザ

インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌のフリーザのレビュー・感想・評価

3.8
【コーエン兄弟連続鑑賞記録その16】

コーエン兄弟作品としては『オー・ブラザー!』以来の音楽が沢山出てくる映画。
またパッケージで抱えられてる猫は『赤ちゃん泥棒』の赤ちゃん以来のマスコット的なキャラクター。この猫が中盤まで話の推進力になっていて面白い。
珍しく主人公が犯罪者ではなく作中で何も事件が起こらない作品。


コーエン兄弟作品の中で映像の綺麗さでぶったまげたのが『ノーカントリー』と『バスターのバラード』なんですが、今作はそれらの瑞々しい美しさとはまた違う灰色がかった映像で、これがまたその2作に負けない位素晴らしい。


白黒の『バーバー』は除いてコーエン兄弟作品は基本的に色鮮やかでカラフル(『ファーゴ』も雪の白との対比で他の色が映えるようになってる)な作品が多いんですが、これはもう全編どんよりと曇った色合いで、それがルーウィンの気だるい心情とマッチしていて心地いい。


売れないフォークシンガーである主人公が成り上がっていくわけでもなく、かと言ってどん底まで突き落とされるわけでもなく淡々と微妙に嫌なことが続いてくだけの話で、音楽で言えばサビがない曲みたいな映画ですがその淡々とした空気感がハマったおかげか中々楽しめました。
出てくる曲がどれもいい。


コーエン兄弟の映画はどれも微妙にファンタジーさがあるというか、どこか写実的なだけではない空気感があると思ってますがこの作品も例に漏れず。
かと言ってドラマティックな展開がある訳でもなくストーリーが特段面白いわけでもない今作は特に人を選ぶ作品だと思います。


連続鑑賞とか銘打ってますが、鑑賞順としては最後に観た作品でした(『バスターのバラード』までで)
フリーザ

フリーザ