まっどでーもん

インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌のまっどでーもんのレビュー・感想・評価

4.8
この映画の主役ルーウィン・デイヴィスのモデルになっているフォーク・シンガーは実際にグリニッジ・ヴィレッジなどで独唱したいたデイヴ・ヴァン・ロンクという人らしい。東海岸で栄えたフォーク・リヴァイヴァルの火付け役となった一人でそれこそボブ・ディラン並みに重要な人物。一応、フォーク好きの私としてはチェックしておくべき存在である。

彼が体験した数日間の奇妙な出来事をコーエン兄弟が見事に映像化してくれた。また当時のグリニッジ・ヴィレッジの街並みが綺麗に再現されており、主演オスカー・アイザックの粗野で無骨な感じもとても魅力的だ。当時のフォーク・シンガーはこのような自堕落な雰囲気の男性がやたら多かったと聞くので何かとシンパシーを感じる。

コーエン兄弟作品としては「オー・ブラザー!」と同趣向のもので、アメリカの土臭い音楽に併せて主人公の珍道中が語られるものだが、毎回この監督のストーリーテリングの巧妙さには唸らされる。もはや純文学の領域ですらある。毎度お馴染みのジョン・グッドマンを始めとする変てこなキャラクターも多数登場し、主人公を取り巻く異常な事態がどんどん加速していく。オチもなかなか小粋で、大人向けのコメディとしては最高峰の出来栄えといえる。

惜しむらくはカメラワークと編集がややぎこちないところか。台詞が多めなのでズルズルと引っ張られ過ぎの印象もなくはないが、それでも手放しで褒めたくなる素晴らしい作品であることには違いない。