高橋典幸

子宮に沈めるの高橋典幸のレビュー・感想・評価

子宮に沈める(2013年製作の映画)
4.0
誰にでも起こりうる日常の出来事の積み重ねでネグレスト(育児放棄)に至ってしまった過程と育児放棄された幼児たちの様子を室内映像のみで淡々と見せる作品。

母親の由希子を演じた伊澤恵美子さん、娘の幸(さち)を演じた撮影当時3才の土屋希乃さん、ネグレスト(育児放棄)を選択してしまった母親と育児放棄された娘という共にしんどい役どころだったかと思いますが、素晴らしかったです。

また、土屋希乃さんと、息子で乳幼児の蒼空(そら)を演じた土屋瑛輝さんとは、実の姉弟とのこと。ふとしたシーンの数々でのお互いを見る目や関わり方が、幼いながらお二人共とても自然だったので、なるほど、さすが実の姉弟と感心しました。

劇中では、この人が悪い、あの人が可愛そう、その人もひどい、いや、近所や職場や社会が悪いといったことを感じさせ弾弓や擁護するような意図的な演出はありません。この点が好感をもてました。

人目につかないこの家庭内で起こっていた出来事の数々をアパートの室内の情景シーンのみの積み重ねて次から次へと淡々と見せてくれます。BGM音楽も過度な効果音もありません。エンドロールさえ無音です。あるのは、部屋の中で発せられる言葉と生活音と静寂の間。

さらに、シーンによっては、定点カメラの長回しという映像もいくつかあるのですが、フレーム外で行われていることをカメラが追わず、音や声だけで何が行われているかをあえて見せないというカメラワークは秀逸でした。何でも明確に見せればいいってものではない。あえて見せず、音と声のみでこそ、心にささり、沁み入ることがあるものです。

その直後、シーンによってはしっかり来るべきところに自然にフレームインしておさまったりする蒼空と幸。定点カメラで撮影しながら、乳幼児と3歳児の動きと移動の時間や間が計算されているのかと感銘を受けました。

時に無音の定点カメラでの長回しもあります。言葉以上に語りかけてくる切なさがありました。

日本国内で過去に実際に起ってしまったネグレスト(育児放棄)から発したいくつかの事件を題材に描かれたという本作。

このような出来事を経験してしまった家庭もあったのだなあということと、特異な人や家庭にのみならず自分の身近でも起こり得るかもしれないということを垣間見られたことに価値を感じた作品でした。


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