はせ

あなたを抱きしめる日までのはせのレビュー・感想・評価

あなたを抱きしめる日まで(2013年製作の映画)
4.0
『映画と本の意外な関係!』シリーズ。

アイルランドの厳格なカトリックの家庭で育てられたフィロミナは、カーニバルで出会った青年に処女を奪われた。父は未婚で妊娠した娘を恥じ、修道院に収容した。その修道院は"更生"の名目でフィロミナに強制労働を強いたあげく、幼い息子アンソニーを養子に出してしまった。
50年後、フィロミナ(ジュディ・デンチ)はイギリスで娘と暮らしながらも、アンソニーのことを案じていた。娘は偶然、ブレア政権の報道官をクビになったばかりで職探し中のマーティン(スティーブ・クーガン)と知り合い、生き別れの息子を探す母のことを記事にしてほしいと頼み込む。引き受けたマーティンはフィロミナと共にアンソニーが引き取られたアメリカへ向かうが…

めっちゃくちゃ重たいあらすじだけど、ジュディ・デンチ扮するおトボケで可愛いおばあちゃんと元報道官のジャーナリストの凸凹コンビが笑いを誘う。思ったよりコメディタッチ。

マーティンはフィロミナたちが親子二代に渡ってカトリックに人生を台無しにされたことを知った無神論者のマーティンの「カトリックはクソだ」という意見には全くもって同意する。人類の歴史の中で、宗教としてどれだけ人々に救いを与えてきたかわからないが、間違いは間違いとして認めるべきだ。『スポットライト』『ジーザス・キャンプ』『マグダレンの祈り』など…教義という大義名分で他者の人生をめちゃくちゃにしてきたカトリック教会の罪は明らかになっている。しかし最後のフィロミナの決断にこそマーティンや僕たち観客は神を感じてしまった。ジュディ・デンチの名演に心が震える。

「怒りの中で生きたくないのよ」
はせ

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