Yui

あなたを抱きしめる日までのYuiのレビュー・感想・評価

あなたを抱きしめる日まで(2013年製作の映画)
4.0
歴史的に観る意味も価値もある映画。
1952年、アイルランドで未婚の母になったフィロミナが強引に修道院に入れられ、強制的に息子を奪われ、息子を追わない事を契約させられてしまい、50年の沈黙を破ってジャーナリストのマーティンと息子探しの度にアメリカに渡る所から始まる実話を基にしたお話。

生きた時代や宗教が違うので衝撃的な内容ばかりだった。未婚の妊娠の罪。セックスを楽しんだ罪。それで親に勘当されて強制的に修道院行き。修道院からは大金を払わないと出られず軟禁状態で奴隷のように働かせられ、出産も無麻酔で幾人もの母子の命が失われ、無事に産まれても1日1時間しか我が子に会えず、知らない間に我が子を修道院から売り飛ばされる。
その挙げ句、子供と一切関わらない、探さないという誓約書を書かされる。人としての尊厳なんて何もない。
時代が進んでも、過去を隠蔽していたり、嘘をついたり、神とは?信仰とは?と、とても腹立たしく悲しくなってしまう。

ストーリーは想像以上にテンポが良く、二転三転するので飽きないし、ショッキングだったりするんだけど、フィロミナの愛らしく楽しく朗らかな人柄にかなり救われるしほっこりさせられる。
観ている側としてはマーティン目線で観る人が多いと思うんだけど、二人の間に友情が生まれ、マーティンに心救われます。ありがとうマーティン!!ってなる😭

カトリックの悪い面での歴史を突き付けられて凄く不快に感じるし、フィクションだとしても、ここに出てきたシスターヒルデガードのように信仰で自ら貞操を守り続ける事で、個人的な嫉妬心を持ち婚前妊娠をした女性を虐待する人はきっと今もいると思う。少なくとも、どの時代にも。

凄いなと思ったのは、こんなにカトリックの悪い面が描かれているのに(脚色もあると思うけど)、カトリックの総本山バチカン市国で上映会が催されたこと。ローマ法王は、特定の映画は観ないと常々仰っていただけあって、世界的に注目もされていたし、それだけではなくローマ法王がフィロミナを招いて面会もしたそう。
今も6万人以上のアイルランドカトリックの女性たちは我が子の居場所が分からずにいて、フィロミナはその人達の為にプロジェクトを設立したんだとか。
知らなかった史実を知れる映画は本当に観る意味があるなと思います。
Yui

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