かーくんとしょー

パン種とタマゴ姫のかーくんとしょーのネタバレレビュー・内容・結末

パン種とタマゴ姫(2010年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

ジブリ美術館で観られる短編映画のひとつ。
台詞はないが、効果音と久石譲のBGMによって、十二分に聴覚的にも訴えかけてくる。

作品はロシアの民話に出てくるバーバヤーガという魔女をモチーフに、さらには日本の童話「おむすびころころ」から着想を得たストーリー。
ストーリー自体も面白いのだが、それ以上に嬉しいのは他の長編作品との繋がりを感じられること。

バーバヤーガとタマゴ姫の関係は、間違いなく湯婆婆と千尋の関係。
また、麦畑はナウシカの黄金の草原を思わせ、パン雄(という名前らしい、公式パンフレットによると)が釜から出てくるシーン以降はラピュタのロボット兵そのもの。

さらに再度公式パンフレットによると、宮崎駿監督が本作の続きとして想定しているのは、パン雄とタマゴ姫はバーバヤーガの元に帰り、三人で仲良く暮らすという流れらしい。
このせっかく脱出できたのに結局元の場所に戻る図式も、「ハウルの動く城」のカルシファーを思わせるもので、おそらく宮崎監督の好みなのだろう。

作中で明かされなかった疑問としては、タマゴ姫がなぜバーバヤーガの元へ行ってしまったのかという点。
初めは、バーバヤーガが魔法でたまごに命を与えたのかと思っていたが、終盤でタマゴ姫の両親が出てくるため、余計にわからなくなった。
ふと、「魔女の宅急便」のように、あれはたまご姫に課せられた修行だったのかもしれない、と感じた。

とにかくラストは宮崎駿作品史上最高レベルのどんでん返し(?)で、土星座全体が笑いと愛おしさに包まれる。
最近はアニメ映画の地位向上により哲学的な作品が多くなってきたが、子どもも大人も(言葉の通じない外国人も)楽しく観られるという観点で言うならば、このようなわかりやすさもアニメの原点てして重要な要素だと感じる。

written by K.
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