すぎえ

グランド・ブダペスト・ホテルのすぎえのレビュー・感想・評価

4.5
この映画の見所は画面に詰まっている。
食に例えると、シュークリームに「これでもか!!」とクリームがたっぷり入ってるのと同じ感覚。

なぜか今テンションが高いから、英語レビューを翻訳したつもりで書く。
お話も勿論楽しいけれど、今回はぜひ画面の魅力を伝えたい。

設定
マイケル(齢→26)
女の子大好き芸人

これは、サイレント映画とトーキー映画のいいとこどりをした映画だよ。クラシカルな形式の現代映画だ。

「ムッシュ・グスタヴ・H」と、彼の相棒となるベルボーイ「ゼロ」
この2人、表情がほとんど変わらずどこか機械的なんだ。
そんでもって会話のキャッチボールがとにかく早い、テンポが良すぎる。

これって、トーキー映画だからこその面白さだと思わない?

もしサイレント映画で無表情な2人がお互い間髪入れずにパクパク口を開く様子があったとするよ、特別面白くはないね。
バスター・キートンみたいに無表情の男が一生懸命自転車を漕ぐ姿は滑稽で面白いかもしれないけど、サイレント映画の会話シーンは表情の豊かさがあってこそだ。

無表情な顔と口元には、声がある事で面白さが生まれるんだ。
ここに会話劇の魅力があるんだよ!
実際に、ウェスはエルンスト・ルビッチに影響されて映画を作ってるみたいなんだ。ルビッチは会話劇が上手いと言われた人さ。ルビッチのトーキー作品は『天使』と『生活の設計』しか見ていないけれど、確かに洒落ていて面白かった。

それとね、サイレント映画に通じる箇所ってのは画の撮り方や演出のテンポがいいからなんだよ。
瞬きをする間もないほど画面の切り替わりが多い。
登場人物達が歩くシーンは大体みんな小走りか早歩き。「時間節約しすぎじゃないか?!」とツッコミを入れたくなるほど無駄のない動きを連鎖させていく。
そして全ての物事が用意されているかのように、次の展開へとクルクルと変わっていく見事な工夫が施されてるんだ。
飽きない作りだよ、きっとサイレント映画でも同じように楽しく見る事ができるだろうね。

画面の表情がコロコロ変わって、まるで見ていて飽きないキュートな女の子みたいさ。


視覚芸術と会話劇
という
サイレント映画とトーキー映画の良い部分を融合させたほんとに見応えのある作品なんだ。

あとね、ムッシュHが美少年の絵画を壁から外して持ち出し、代わりに過激なエゴン・シーレ調の絵を置くような遊び心も加わってるのも最高のスパイスだよね。

ゼロ役のトニー・レヴォロリの魅力についても書こうか。
美少年ではないのに何故か惹かれるんだ。
どこか寂し気な大きな瞳・抜けていそうに見えて機転の利く頭のよさ・頼りなさそうに見える猫背・アガサのいるシーンだけ感情的になる普段とのギャップ。
彼は特別表情がクルクル変わるわけでもないのに、哀愁漂う表情から目が離せないよ。

ちなみに僕は公開当初この映画がツボにハマりすぎて、3回ほど映画館に通ったんだ。
中目黒のケーキ屋でタイアップスイーツ「コーティザン・オウ・ショコラ・アガサ」が販売された時も勿論買いにいったさ。
劇中でアガサが作るあの可愛いスイーツが売られてたんだ。
店内もメンデルの箱が沢山積み上げられて最高だったよ。
グランド・ブダペスト・ホテルファンで、これを食べなかった人は惜しい事をしたと思うね。
僕は行けて幸せ者さ。

おまけ
ジュード・ロウという誰もが知っている大物俳優を使っているにも関わらず、宣伝で彼の名前を大きく扱わない制作側の姿勢に好感を持てました。