ろ

グランド・ブダペスト・ホテルのろのレビュー・感想・評価

4.1
2つの兄弟星のひとときの再会
窓から見える星空を横切る
1つは東から 1つは西から


もう2度と観ないかもしれないなぁと、
たぶん観れないだろうなぁと、ぼんやり思っていた作品。

2015年11月末からうつ病の症状がだんだん出始め、「あ、やばいな。死んじゃうかも」と漠然とした危機感を覚えた20歳の冬。

ちょうどその時、気になっている人がいました。
クラシック好きで演奏もしていて、映画が好きな彼。優しいところに惹かれつつ、つかみどころのなさや容姿が元彼と被って、なんだかなぁと思いつつ、でも惹かれて。。
そんな気持ちから抜け出せない中、一緒に映画に行くことになって、観に行ったのが「グランドブダペストホテル」。

男の子と映画に行くのは初めて。ウェスアンダーソンの映画を観るのも初めて。なんだかキラキラして見えました。
「アガサとゼロがトラックに落っこちちゃうところ、あの色合いが可愛いよね!」なんて盛り上がったりして。

しかし、それ以降 彼からの連絡はなく、「まぁ、そういうことだよな」と想いを断ち切ろうとしました。それがけっこう苦しくて、「ああ、思っていた以上に好きだったのかもしれないなぁ」と気付いたり。

あれから1年以上が経って。
やっと、また、今作が観れてなんだかホッとしているし、嬉しい。


この映画はこぢんまりした小劇場で紙芝居か人形劇を観ているみたいな、そんな感覚にさせてくれる。パステルとビビットに溢れた色使いで楽しませてくれる。
おとぎ話のようなミステリー。
ブダペストホテル、列車、マダムDの邸宅、教会、美術館、犯罪者拘留所、雪山、お菓子店メンドル...刻々と移り変わる場面は、まるで季節の移り変わりのようでワクワクする。

中でも好きなのは美術館のシーン。
閉館間際の美術館に逃げ込んだ弁護士。
それを追う殺し屋。
甲冑が並ぶ部屋の中を、たくさんの美術品の間を走り抜けていく。しかし、追っ手は静かに迫って来て...。
どんなサスペンス・ミステリー映画でもやっぱり醍醐味はあのスリルですよね。展開が分かっていても、ハラハラしちゃう。

それから雪山のシーン。
冬季オリンピックをしてる割りにお客さんも選手もいなくて、殺し屋(ウィレムデフォー)の独走やけど...ってツッコミながら観るのが楽しい場面(笑)そして殺し屋を追うゼロとグスタヴ。ソリに乗っちゃってから「これブレーキないけど、どうする?」って相談してる、あのゆる~い感じがたまらなく好きなんですよね(笑)


でも今作は底抜けに明るいハッピーエンドというわけではない。
そこがいい。
戦争の影も目に見える。
人々の孤独も不安も感じ取れる。
そんな寂しい人々にとっての癒しの場。
それがグランドブダペストホテルなんだ。