タケオ

グランド・ブダペスト・ホテルのタケオのレビュー・感想・評価

3.6
お気に入りの香水レールド•パナシェを常に欠かさず、熟女の夜のお相手まで務めちゃう変人カリスマコンシェルジュのグスタヴと、学歴も経験もない新人ベルボーイのゼロ。

豊かな色彩やシンメトリーの構図などの視覚的な芸術の美しさに目を奪われがちだけど、とある殺人事件を通して描かれる2人の男の友情物語こそが本作を単なる"オシャレ映画"に留まらないビターな"大人の作品"へと押し上げているのだ。

一見なにも共通点がないように思えるけれど、ユダヤ人のグスタヴと移民のゼロはお互いに祖国を持たない者としての孤独と痛みを理解し合えたからこそ、年齢や人種を超えたアツイ友情を築き上げていく。

しかし、物語は簡単には終わらない。
本作はどれ程の友情であろうと、戦争の惨禍の前ではあまりにも無力だという悲しい事実を鑑賞者に突きつけてみせる。

だからこそ、グスタヴの「まだ文明のわずかな光があった」という台詞がビターながらも優しさに満ちた余韻を鑑賞者の胸に残すのだ。

人種差別や戦争といったテーマを優雅な世界観とシニカルな笑いにとじこめた、なんとも"粋"な作品だ。