こたつむり

ザ・コール [緊急通報指令室]のこたつむりのレビュー・感想・評価

4.2
♪ この声が聞こえるかい?
  今なら聴こえるかい?
  どうか苦しまないで…

これは紛れもない傑作。
サスペンス映画として王道を突き抜ける展開に鼻息は荒く、ガンガンと前のめり。知名度が低いのは“野暮ったい副題”の所為じゃないでしょうか。

何よりも素晴らしいのが“攻める姿勢”。
主人公が受け身ではなく“誘拐された女の子を助けるために”ガンガンと突き上げていくので、そこにカタルシスを感じるのです。

ただ、それは「蛮勇」かもしれません。
時には、その姿勢が裏目に出て「立ち直れないような失敗」に至ることもあるかもしれません。でも、そこで恐れず、踏み込むことが勇気。「勇気」とは「怖さ」を知ることッですからね。

しかも、主人公を演じたのはハル・ベリー。
逆境に屈しない“意思の強さ”を感じる見事な配役でした。

また、ヒーロー映画は悪役が重要なように。
サスペンス映画だって“犯人”が重要。
やりきれない描写を重ねて同情を誘うのか、唾を吐きかけるほどに“ゲス”なのか。その造形は徹底的であることが好ましいのです。

勿論、本作が選んだのは後者。
何しろ「あーあ。おまえの所為で殺しちゃったよ」なんて最高の(最低の)セリフを口にしますからね。他人の所為にするのはゲスの中のゲス。キング・オブ・ゲスですよ。

だから、綺麗事で終わらないのも興奮の極み。
常識的に考えれば××だと判っていても、物語を盛り上げるためには××を選択するのが大切なのです。いやはや、最高の一撃でしたね(ネタバレに抵触するので一部を伏字にしました)。

まあ、そんなわけで。
『セルラー』が切り開いた“電話が切れない”系統に連なる物語。サスペンス映画が好きな身としては至福の作品でした。ただ、サスペンスを重要視したために“重さ”はありません。最後の最後までドキドキハラハラを楽しむ物語として割り切ったほうが良いと思います。

…それにしても。
僕も色々と他人の所為にしたいなあ(←ゲス)。
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