mai

アイ・ウェイウェイは謝らないのmaiのレビュー・感想・評価

3.7
中国という国の体制と、日本の生温かさを実感した作品でした。

Amazonの100円レンタルセールにアイ・ウェイウェイの「ヒューマン・フロー」が出ていて、ヒューマンフローは映画館で見れるチャンスを逃していた作品だったのでレンタルして…「アイ・ウェイウェイは謝らない」はその繋がりで借りました。

アイ・ウェイウェイという人さえ知らなかった…という点で、どれだけ自分が生温かい世界で生きてるのかを痛感させられました。どれだけ世界に目を向けてなかったのだろうと。
自分の意思を持って、それを作品に表すことで初めて完成するアートというのは、ここまで力を持つのだなぁと思いました。彼にとっては、思考が先にあって、そこにアートが付加される形で、だからこそアートの形があまりにも直接的で誤解のしようがない。そこが、彼の良いところでもあり、時に過激さを増させる要素でもあります。それこそが、彼に多くの人が惹きつけられる魅力の大元です。
アートが、未来の世代に良い時代を作ろうとするための道具となっているのも印象的でした。
アートには限りません。
私は自分の発信するものに、ちゃんと意思を付加して、ちゃんと責任を持てているだろうかと思いました。
彼を見てると、言葉は大きな武器だけれど、時にそれが自分を何かしら制限したりするものにもなりうるのだと思いました。それだけ力を持ってるものを、私たちは周りに流されて安易に使ってはいないでしょうか。
また、彼の子供にまつわるシーンも印象的でした。結婚している状態で、友人との間に子供ができてしまう…そこを「産むのは女性であって、自分はちゃんと責任は持つ」という。決してカッコいいとは思わないけれど、そういう姿勢が、彼の責任の持ち方のスタンダードなんだなぁと思いました。活動家だからこそ…というべきなのかは分からないけれど、誰かが傷つくという物事の前に、自分の信念が先にやってきて、それに則ってやっていう感じ。

ここまで観てると、日本は本当に穏やかで生温かい社会なんだと思わされました。もちろん、中国とは歩んできた歴史も違うし環境も全然違います。比較の対象にもなり得ないですが、それでもあえて比較するならば、若者の政治や社会への関心度合いは確実に違うなと思いました。
今回のコロナ感染症の事案を見ていても、自分の身を賭してまで訴えようという力はありません。あくまで、誰かがやってくれるだろう、政治がなんとかすべきだろうという、達観・他人任せの姿勢です。SNSには不満ばかりです。でも行動には移さないのです。
もちろん、行動に移す人もいます。でも、その規模や影響力は、中国と比べた時に圧倒的に小さいと言えるでしょう…。おかれた現状の緊急性が違うといえばそれまでですけど、日本には明らかに「自分たちがなんとかして未来をいいものにする」といったような気持ちが薄いのだろうと感じました。それが良いか悪いかは別として。

中国ってすごい世界だな…と思う一方で、これを他人事として流せるほど楽観視はできないなとも思いました。
mai

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