教授

白痴の教授のレビュー・感想・評価

白痴(1951年製作の映画)
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ドストエフスキーの原作は未読である。
おそらく、難解というよりは読みづらい、という感じなのだと思う(「罪と罰」なんかを見ても…)。
と、考えると、映画にしてくれることは非常にわかりやすい。
そして、コミックになるよりはそこそこ実在感を持って迫ってくる。

本来なら6時間超えの大作。
それが半分になり、さらにカットされたことにより黒澤監督自身は大激怒だったらしいけれど。
出来るだけ長くない方がいい。
あるいは「人間の條件」のように分けてしまうとか。
とかを考えながら観つつ、序盤の端折り方と、二部からの畳み掛けを考えると、やっぱり完全版が観てみたいなとも思う。

話を見も蓋もなく言ってしまえば「昼ドラ」的。
しかし、当時の日本の風景や世相が今やフィクションに映るので気にならない。
むしろ、舞台が東京ではなく(原作がロシアというのもあり)北海道の雪の中、というのはやはり合っていた。

キャスティングはほぼ完璧。
森雅之、原節子、三船敏郎、久我美子など。主役陣にとどまらず、脇を固める志村喬や千秋実や千石規子や常連組も特に良い。

お話としては、「女の意地」から始まって、女ってめんどくさいよね、ってなりつつも。
それは尊厳に関わる問題であることとして描かれていると思う。
ひとりの女を巡る話でも男同士の問題は比較的単純、且つ簡単に解決する。
しかし話だけ追えば、考えが複雑で意見が変わり。
久我美子がこじらせ、原節子がぶち壊す。

とはいえ、野暮なくらいに言わなくていいことまで言う森雅之も、野暮なことは言わないが比較的粗雑な三船敏郎も実際火種にはなってはいる。

恋という因果がみんな真面目過ぎることで悲劇で終わる。そして、森雅之と久我美子。三船敏郎と原節子が歪でもくっついていれば案外、丸く収まるはずなのが心憎い。
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