えいがドゥロヴァウ

無常のえいがドゥロヴァウのレビュー・感想・評価

無常(1970年製作の映画)
3.9
スタイリッシュ時不待
大晦日に【背徳とエロスの実相寺昭雄フェア】開催中
実相寺昭雄の日本アートシアターギルド作品(『無常』『曼陀羅』『哥』『あさき夢みし』)をまとめたブルーレイボックスを買いましたので鑑賞
寺山修司もいつでも書を捨て田園に死してさらば箱舟です

画面を割れば2つのショットになりそうな構図
神経質的な美しさのシンメトリーや、台詞を喋る役者を追わない奔放なフレーミング
手を替え品を替えの構図の凝りようで飽きさせない
また音楽を途端に止めるなどといった緩急を用いたドラマの見せ方が非常に上手く
モノクロームの質感と日本家屋のロケーションの妙も相まって引き込まれました

姉との近親相姦、そして師匠である仏師の妻との不倫
21歳の主人公マサオは背徳的なエロスに耽溺するが、それを寺の住職に見咎められたことから彼の思想が暴露される
彼は仏教の教えの欺瞞を悟り、社会秩序の不要を説く
仏像の笑みは自らの教えが欺瞞であることを知りつつ、それを有難がる人々を嘲笑っている
だから仏像が好きなんだ、と
何というニヒリズム!
ここまでストレートに台詞で主題の投げかけがあるとは思っていなかったのでビックリ
なんて分かりやすいんだ…!

特に印象的なのは仏師とマサオの関係性でした
モラルから逸脱することによって、それを創造性の源とする
マサオは不倫の現場を仏師にわざと見させ、高齢のため不能な仏師はマサオが見せているのを知りながら眺める
「いっそのこと先生も一緒に寝ませんか?」
「ああ、そうしよう」
芸術家同士の了解は一般人である仏師の息子の目には狂気として映る
2人の狂気を吸った美しい菩薩像は笑いません