ハル

ブルージャスミンのハルのレビュー・感想・評価

ブルージャスミン(2013年製作の映画)
3.1

かつて、ジャスミンの人生は、素晴らしい夫と豪奢な生活に恵まれ、一点の曇りもないかのように見えた。然し、栄華を極めた人生も、夫の逮捕により終止符を打たれる。すべてを失い、文無しとなったジャスミンは、妹の家に居候することになる。彼女を待っていたのは、豪奢な生活とは対極の惨めったらしい生活、そして、鼻持ちならない庶民との触れ合いであった。虚栄心の塊である彼女には、その悉くが耐えられず、次第に精神を病んでいく。そんな彼女に一筋の光明を当てたのは、将来を約束された外交官との出会いであった。ジャスミンは、彼こそが自分を上流社会に還してくれる運命の男性と思い込み、嘘の上塗りを重ねていく。 

……と、ここまで書いたが、これは、要するに、一人の痛い女が精神を病んで堕ちていく話である。その様子を、シリアスに、時にユーモラスに描いている。作品の完成度は高く、非の打ち所は全くない。唯、楽しんで鑑賞できるかと問われれば、疑問符がつく。 

ジャスミンは、文無しのホームレスのくせに、ブランド品で身の回りを固めたり、ファーストクラスに乗ったりするような、救いようのない馬鹿女だ。この馬鹿が理想と現実の狭間で苦しみ、尚も栄光へと返り咲こうとする姿は、苦笑いを通り越して哀れである。とは言え、この馬鹿っぷりを笑い飛ばしたという人もいることだろう。確かに馬鹿女の暴走は、傍目には滑稽に映るかもしれないが、この作品の本質はコメディとは別のところにある気がする。少なくとも、私には、これで笑おうという感性はない。 
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