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ブルージャスミンのトルーパーcomのレビュー・感想・評価

ブルージャスミン(2013年製作の映画)
4.5
ケイト・ブランシェット様がアカデミー主演女優賞を受賞したセレブの転落映画。
オールデン・エアエンライクが出演していることもあり観賞。

【1】キャスト
2018年の今観てみるとけっこう興味深いキャスティングである。

主演のケイトブランシェットは当時から誰もが知っていたが、それ以外のキャストは本作の後に大作映画に出演した俳優が多い。
公開時よりも現在の方が、観ていて「あっ!🤭あの人出てる!」となる場面が多い。

・ジャスミンの夫役でM:I シリーズハンリー長官のアレック・ボールドウィン。

・ジャスミンの妹ジンジャーにシェイプオブウォーターのサリー・ホーキンス。

・ジャスミンの義理の息子ダニー役で、ハンソロのオールデン・エアエンライク。

・ジンジャーの 恋人チリ役で、アントマンの元嫁の現夫パクストンを演じるボビー・カナヴェイル。

・歯科医役で、ドクター・ストレンジでも医師を演じたマイケルスタールバーグ。

・ジャスミンの新恋人役にマグニフィセントセブンで悪役ボーグを演じたピーター・サースガード。


<以下、微ネタバレ要素あるかもな感想>



【2】どう観るか
◼︎姉か妹か
ケイト・ブランシェット演じる元セレブのジャスミンと、その妹で底辺生活を送るジンジャー。
姉ジャスミンの転落を描いた映画ではあるが、この話は姉妹を対比させることで成り立っている。

転落しているのにそのことを認められない痛々しいセレブを怪演するケイトブランシェットを眺めるのも本作の楽しみ方ではあるが、
だからといって、妹の方が正しくあるべき人生ですよ、ということではないようにも思う。

一見「転落していくセレブに対し、妹はささやかな幸せをつかみました」と捉えられなくもないが、よくよく考えてみると妹ジンジャーもけっこうしょうもない人間である。
あの後も貧乏暮らしは続くだろうし、いつか夫にDV受けたりするかもしれないし、またすぐに浮気とかしそう。

そういう意味では「こんな場所にいてはいけない」っていうジャスミンの苛立ちもわかる部分はあるし、
人生において「自分はこんな状態には甘んじないぞ」というガッツは必要な場面もあるよなと思う。

◼︎見栄と虚栄心
嘘と虚栄心の塊で、自身の高すぎるプライドと現状への苛立ちから精神不安定になっていくジャスミン。
見ていられないほどの転落っぷりだが、実はジャスミンに共感できる部分を感じてしまう観客もけっこういるはず。

ジャスミンに1ミリも共感できない人にとってはただ痛々しいだけの映画と思えるだろうが、
「少し、わかる」人にとっては胸が痛くなる映画になる。

ここまで転落するかどうかは別として、劇中のジャスミンと似たような気持ちを覚えたり、近い状況に直面したことがある人も多いと思う。

たとえば、受験で第一志望の学校に不合格となり不本意な進学先に入学し、同級生に「どことどこを受験したの?」などと聞かれたとき。

たとえば部活で、かつてはレギュラーだったのに、サボったりケガをしたことで、格下だったメンバーにポジションを奪われ、そのことを知らない友人や親戚に「ポジションどこなの?」などと聞かれたとき。

たとえば、自慢の恋人がいたのに別れることになってしまい、友人に「なんで別れちゃったの?もったいない」などと触れられた時。

人生でそんな場面に遭遇した時、
「自分に力がなかったから」
「自分が努力を怠ったから」
「自分に魅力がなかったから」
こうなってしまったんですと謙虚に説明ができるだろうか?

自分は学生時代、受験がうまくいかなかった/部活でベンチだった/モテなかった、ひどいふられ方をした、と苦笑いしながら過去を振り返ることができるだろうか?

聞かれてもないのに、
「2年の春まではレギュラーだったんだけど、最後サボっちゃって遊んでたんだよね」なーんて言い訳付きで話してしまいそうになることはないだろうか?

多少の見栄をはったり、話を盛ってしまったりしないだろうか?

人生がうまくいかなくなったとき、プライドが邪魔をして、うまくいっていた時の自分にこだわってしまい、現在地を見渡せなくなることはないだろうか?

そんな気持ちを持ったことがある人なら、
ことあるごとに、「私も以前は〜」と口走ったり、次々と嘘を塗り固めていく彼女に対して呆れた目だけで見ることはできないだろう。

転落し、取り乱していく彼女の高そうなシャツが脇汗でびっしょり濡れたカットや、マスカラが崩れて見てられない顔になった彼女を爆笑するのか、胸が苦しくなるかは観る人次第。

転落の決定打となった事件についても、プライドの崩壊が破壊衝動につながったジャスミンが、電話機を破壊したジンジャーの恋人チリと対比されていて切なくなります。

怒りや不満は、ストレートに人に伝えるべき場面もあるし、自分は優秀だと思っている人でも、世界は自分のコントロールできるものではないことを知るべきなのだなと。

なんか、終盤のジャスミンを見ていて、ダメでどうしようもない女であることは明らかなのに少し共感をおぼえてしまいました。


【3】演出
本作は過去シーンと現在のシーンが特に説明もなく交互の編集で描かれます。
最初理解が遅れることが多くて疲れたけど、途中からジャスミンが崩壊したりドヤ顔になったりの落差が興味深く、じわじわよくなってきた。
ケイトの演技力との相乗効果ですばらしい編集です。いちばんの見どころ。

【スコア】
★4.5ですね!
これは人によって点数大きく変わると思います。
何度も見返したくなるような気持ちのいい映画ではないですが、個人的には傑作と感じました。
観終わった後いろいろと考えてしまうので、観客の人生になにかの変化をもたらす可能性がある映画だと思います。

最後に、
今年アントマン&ワスプとヴェノムを観たばかりなので、
「またサンフランシスコかよ」と思ってしまいました^^;
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