アニマル泉

ドレミファ娘の血は騒ぐのアニマル泉のレビュー・感想・評価

ドレミファ娘の血は騒ぐ(1985年製作の映画)
4.3
黒沢清の長編第二作。もとは日活ロマンポルノで制作されたが納入拒否になり一般映画として公開されたいわくつきの作品だ。初台の東京工業試験場跡(いまの新国立劇場)を大学に見立てて撮影された。このロケ地は本作の後、当時の日本映画で廃墟としてやたらと使われていた。
本作はゴダールの影響が強い。やりたい放題である。麻生うさぎと加藤賢崇がお互いをモノ越しに覗き見して直結のキスカットになる「勝手にしやがれ」へのオマージュ、「はなればなれに」や「気狂いピエロ」を彷彿させるミュージカル仕立て、ビデオ画面の挿入、カメラ目線、フリップに書かれたテキスト、ラストのゲリラ戦は「ウィークエンド」だ。ラストカットの長回し、スモークの中の撃ち合い、川の出現は素晴らしい。「川」や「海」は黒沢の主題かも知れない。立て看板の文字も印象的だ。冒頭、洞口依子の長い横移動撮影で始まり、途中に劇団員が運ぶ建具などがワイプするのがいい。「階段」は頻出する。扇風機や「風」が強調される。伊丹十三の研究室の拷問台のような奇怪な装置、恥ずかしさの限界を実験するという何とも如何わしい装置がクライマックスに登場する。
自転車に二人乗りする伊丹と洞口を捉える長玉レンズのフォローショットが瑞々しい。洞口のウォークマンが印象的だ。
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