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鑑定士と顔のない依頼人のyasukoのレビュー・感想・評価

鑑定士と顔のない依頼人(2013年製作の映画)
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絶望であった。こんな結末誰が求めているのだろう。
あたしはこういった美しさの中に憎悪を残す映画が嫌いだ。全部嘘に見えてしまうから。
ひとりで生きていた。ひとりでも喜びを知っている老人は美しい世界で生きていた。ひとりで美しく生きていたのに。
誰でも嘘はつく。あたしも、たくさん嘘をつく。
それは、自分と相手のためにつく嘘であって、自分の為だけの嘘ではない。だからあたしは彼らを許しはしない。老人の美しい世界には彼らのような低俗な嘘は存在してはならなかった。
でもあたしも、知っている。
第三の目線で見たらなら、それは嘘でしかないような物語でも、あたしの目からみれば真実であったのだ。少し熱が引けばやはり偽りだったのかと考える。いや、そう割切れたほうが生きやすい。わかっていても、あの出来事に嘘なんてない。美しい物語があったのだと思えてしまうのである。
そう思うと、本物の美しさというのは、目では見えないのかもしれない。嘘でもそれを本物と信じることができること、その中に美しさがあるのだ。その老人は年老いて初めてそのことに気づくことができたのかもしれない。しかし、年老いた心には絶望を打ち消すほどの美しさは残らなかったのだろう。彼を今すぐに抱きしめてキスしてあげたい。そして、嘘でもなんでもいい。美しい物語をつくってあげたい。
誰かを絶望させる嘘なんか吐きたくない。誰かを輝かせる嘘をたくさん吐きたい。