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鑑定士と顔のない依頼人のktyのレビュー・感想・評価

鑑定士と顔のない依頼人(2013年製作の映画)
4.3
美と愛の因果応報、難解でしたが原題『The Best Offer』最高額落札額の対象が何を意味するか?それに尽きる作品。

私、一時美術品をよく銀座で購入してましたが、訳ありで、本当に手元に置きたい作品以外は公共機関に寄贈しました。

収集家は、美に特定の憧れがあるから収集し続ける。その憧れはどれだけ収集しても手が届かない。けれども美術品以外の形で、その憧れを手に入れると収集に区切りが着きます。

美術品には制作者の魂が宿っているので鑑定士は、作品を通じて、制作者と無言の対話ができる。贋作の制作者との対話により贋作と見抜けるわけです。私見ですが、、、

残酷なのは、時代は、作品の保有する人間性に、スポットを当てることも、当てないこともある。スポットの当たらない作品は評価の対象にならないのです。

本作のジェフリー・ラッシュは、『シャイン』のように、屈折しているけど一流の人間の演技はまさに彼の真骨頂です。

そして、ドナルド・サザーランド、先日の『アド・アストラ』の監督、ジェームズ・グレイによると、彼は、カメラマンの使うレンズにも精通していて、レンズによって演技を変えることができるベテランだと解説してました。だからこの人が登場する作品には、注目してます。

音楽は、巨匠、エンニオ・モリコーネ、物語の展開、とりわけ、主人公の女性に対する様々な想いを、女性のスキャットの多重コーラスの移ろいで旨く表現していて、どれだけ引き出しがあるのだろうと、ひれ伏してしまいます。

後、建物の外装と内装、多くの美術品の選択と配置は、圧巻でした。

偶然ですが、衣装デザインは、先日観た『トリスタンイゾルデ』の方でした。

美術とミステリーと愛の残酷さと一筋の希望を感じる名作です。
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