鑑定士と顔のない依頼人
映画館で2回鑑賞してからの、久しぶりの再鑑賞。一度観たらすぐに見直したくなる作品。
天才的な審美眼を誇る美術鑑定士であり、名オークショニアでもあるヴァージルは、クレアという女性から、両親が遺した美術品の査定を依頼される。話を聞こうと屋敷を訪ねるも、クレアは姿を表さずその振る舞いに苛立つヴァージルだったが、ある物を見つけ鑑定依頼を受けることに。
名匠ジュゼッペ・トルナトーレ監督の重厚で洗練された映像と優れた脚本、それを引き立てるエンニオ・モリコーネの音楽が上手く融合し、美術品の美しさも相まって、格調高いミステリーに仕立てられている。
初めて観た時はその結末にただ愕然とするけど、2回目に見直すと、全体を通して無駄なシーンや台詞が一切なく、一見関係のないような部分も、少しずつ繋がって1つの作品になっているのが分かる。その緻密に計算された脚本構成は見事。
気難しいヴァージルを演じたジェフリー・ラッシュの、派手さはないが繊細な演技は印象深く、競売シーンでの流れるような進行と、オクショニア独特な言い回しの上手さはまるで本職のよう。
"いかなる贋作の中にも必ず本物が潜む" という台詞をどう紐解くか、主人公にとって皮肉でもあり救いでもある言葉なので、その解釈が難しい。
今回観ても、はっきりとした答えが見つからないけど、そこがまたこの作品の面白いところだと思う。