Duckfeet

鑑定士と顔のない依頼人のDuckfeetのネタバレレビュー・内容・結末

鑑定士と顔のない依頼人(2013年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

映画館で最初に観た時はそれほど面白いと思わなかった。映像は綺麗だし、ストーリーも凝ってはいるが最後がもやもやすると思っていた。

しかしストーリーを全部知ってから見直すと全てが違うものに見えた。

著名な鑑定士のヴァージルは、白髪を染め一分の隙もないスーツ姿。高級レストランで自分のイニシャルの入った食器で1人で食事をする。人との接触が嫌いで常に革手袋をはめている変人。そんなヴァージルの至福の時は、隠し部屋いっぱいに架けられた女性の肖像画たちを眺めること。

彼は鑑定士として競売を行うかたわら、売れない画家のビリーを使い、気に入った肖像画を贋作と偽り安値で競売にかけ、ビリーに買い取らせて自分のコレクションにしていたのだ。

そんな彼の元にクレアという女性から、両親の遺した美術品を鑑定してほしいと依頼が入る。しかしクレアはヴァージルの前になかなか姿を見せない。実は彼女は広場恐怖症という病気で15歳から27歳の現在まで外に出たことも人と顔を合わせたこともないという。

壊れそうなクレアに次第に心を惹かれていくヴァージルだが、女性経験のない彼はどうしたら良いかわからない。そこでロバートという若くてハンサムな機械修理人に恋愛相談をするようになる。一方でクレアの家の地下室で見つけた機械部品を勝手に持ち帰り、価値あるカラクリ人形の一部ではないかとロバートに組み立てを依頼する。

次第にヴァージルに心を開いていくクレア。広場恐怖症になったのは、15歳の時に旅行でプラハに行き、時計のある広場のNIGHT AND DAYというカフェで付き合っていた男性と楽しい時を過ごしたが、観光を終えた時に車が飛び込んできて男性は亡くなってしまったと打ち明ける。その後クレアとヴァージルは結ばれるが、クレアは「これから何があっても私があなたを愛していることは真実よ」と言う。

なんとかクレアを外に連れ出したいヴァージルだが上手くいかず、ロバートに物事は予想もしない時に突然動き出すものだ、焦りは禁物と諭される。その直後、ヴァージルがクレアの屋敷の前で車を降りると突然暴漢に襲われる。雨の中血を流しながら道に横たわるヴァージル。やっとのことで電話を取り出しクレアにかけ「外」とだけ伝えると、窓から彼の姿を見つけたクレアが門のところで一瞬ためらった後外に出る。大きな声で夢中で助けを呼ぶクレア。病院に運ばれる際にも一緒についてきているクレアを見て微笑むヴァージル。

外に出られるようになったクレアを自宅に誘い、2人は一緒に暮らし始める。そして人との触れ合いを初めて知ったヴァージルは、イギリスでの競売を最後に鑑定士を引退してクレアと2人の時間を楽しむことに決める。イギリスの競売にはビリーも来ており、「寂しくなるよ。君が信じてくれていたら僕も偉大な画家になっていたのに。絵をひとつ送ったよ」と別れの言葉を言われる。

イギリスから帰るとクレアの姿はなく、クレアの屋敷にあったはずのクレアの母の肖像が置いてある。それを持って隠し部屋に入ると、コレクションの肖像画は全て剥ぎ取られており、ショックを受けたヴァージルは気を失いそうになるが、視線の先にロバートが修理しているはずのカラクリ人形があることに気づく。人形はロバートの声で「いかなる贋作の中にも必ず本物がひそむ」と繰り返す。そしてクレアの母の肖像の裏にはビリーからのメッセージが。肖像画がビリーが描いたものだったのだ。全てはビリー、ロバート、クレアが仕掛けた詐欺だったことがわかる。

精神病院で廃人のようになっていたヴァージルだが再び動き始める。クレアは恐怖症どころかこの1年半に何度も家を出ていたことがわかり、ロバートの店はもぬけのカラ。クレアの屋敷と思われていたところは別の人物の持ち物で、ロバートに貸し出されていたことがわかる。

しかしヴァージルは「全ての贋作の中にも必ず本物がひそむ」ことを信じ、プラハに家を借りてNIGHT AND DAYに向かう。ウェイターに「お一人ですか」と聞かれ「人を待っている」と答えるシーンで映画は幕を閉じる。

人嫌いだったヴァージルがクレアに出会ったことによって次第に周囲の人を信じ心を開いていく様子は見事。食事の時もはめていた革手袋が次第に脱げていく様子も面白い。肖像画のある隠し部屋でのヴァージルの様子も時間経過とともに変わっていく。1度目には気付かなかったが、ビリーやロバートのセリフの中には真実を語るセリフがいくつも隠されている。秀作であった。