ジュゼッペ・トルナトーレとエンニオ・モリコーネの黄金タッグが織りなす、摩訶不思議なミステリー劇。
「女性経験のない老人と引きこもり女性の不器用な恋愛」という構図が見えたときに、少しがっかりした記憶がある。タイトルとジャケットから、ダヴィンチ・コードを彷彿とさせる重厚なアートミステリーを期待していたからだ。ただそれと同時に一筋縄では終わらない雰囲気も感じ取っており、終盤の全てをひっくり返す展開はその期待を裏切らないものであった。
この話を一望すると、人生をかけて築き上げたものが一瞬で崩れ去る残酷さが描かれていると思うのだが、不思議と後味の悪さは残らない。むしろ、その程度の器だったのだと割り切れない人間の往生際の悪さに哀愁を感じてしまった。確かに、人間関係を代償にしてまで手に入れたものが空虚だったなんて認められるはずがないとは思う。ただそうして辛い思いをしたとしても、人生は歯車のように回り続けていくだけなのだ。