Automne

とらわれて夏のAutomneのレビュー・感想・評価

とらわれて夏(2013年製作の映画)
4.0
忘れ去られし郷愁、逃れられない切なさ、夏、セピア色、幼年時代。
父性の不在は、息子にそれを肩代わりさせようとして強くあろうとさせ過ぎてしまう。ずいぶんと大人びた13歳は、ときに大人よりも理知的に、悟ったように現実を背負い生きてゆく。性の芽生えともリンクして、この少年が大人になってどうなるのか、非常に興味を抱かせる。
ある意味ピーチパイは無粋だと思っていて、だって、出来過ぎでしょう?PTSDとかそれですらないレベルで、主人公の心は傷ついて、何も感じられなくなっている。
大人のわがままを優先してはいけない。
母親も、それと恋したフランクも、ひととしてできているとは言えない。子どもが可哀想としか思えない。だからたぶんこの映画の恋愛的な極点については泣けなかったし、まったく共感できなかった。
大人のほうが子どもっぽくて、子どものほうが大人びていて、過ちを繰り返して、ときが経ったらそれも忘れて。

カメラワークは基本に忠実な印象で、観ていて安心感があった。作中曲の懐かしいような感じ、それでいて不安を煽るような音楽は我々が「完璧な安全圏」にはいられないことを感じさせてくれる。
引きの強い、大衆受けするような展開こそなかったものの、じとっと心の底のほうにのこるような余韻がありました。
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