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レイルウェイ 運命の旅路のバナバナのレビュー・感想・評価

レイルウェイ 運命の旅路(2013年製作の映画)
3.5
コリン・ファースとニコール・キッドマンが列車で知り合い熟年結婚するという、大人の恋愛物かと思って観ていたら、
実は、新郎エリックは第二次世界大戦の退役軍人で、未だにPTSDに苦しんでおり、その事を結婚してから知った新妻パティも心労を募らせていきます。
やがて、タイの泰緬鉄道の工事をさせられていた捕虜収容所跡で、
自分を拷問していたナガセがガイドをしている事を知ったエリックは、
ナガセと対決する為にタイに向かうのだった…という話です。

日本の敗戦後に、シンガポールでイギリスによる戦争裁判が開かれましたが、捕虜の虐殺事件があったのは、鉄道工事現場よりも収容所の中だったそうで、
その中でも裁判では第4分所長だけが、分所長の中で絞首刑の判決を受けているので、この第4分所ではかなりの拷問や虐待が行われていたのだろう。

同じく泰緬鉄道で働かされていた90歳代の元オーストラリア兵は、テレビのインタビューで、
「確かにあの時は地獄と言えるものだったが、日本人や韓国人と一緒に風呂に入り、言葉は分からないけれど、日に日に友情が芽生えていった…」
と語っている人も居たので、捕虜にとってはどこの収容所に入るかで、雲泥の差があったのかもしれない。

イギリス人は、ナガセが現地でガイドをしている事を「奴は生活の糧にしている」と怒っていたが、反省の気持ちがあるから現地に居るのでは、と思って観ていたのだが、
結局、エリックが目の前に現れるまでは、自分と収容所内の蛮行をまだ切り離している様に思えた。
ナガセもエリックが現れた事で、ようやく真正面から自分の過去と向き合う事ができたのだろう。

本作は、エリックさんが出した自叙伝を映画化したものなので、実話である。
エリックさんは、ナガセが「我々」ではなく、「自分」がどうだったかを心から見つめ直せたから、許す事ができたのかもしれない。
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