MasaichiYaguchi

レイルウェイ 運命の旅路のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

レイルウェイ 運命の旅路(2013年製作の映画)
3.6
エリック・ローマクスの自叙伝「The Railway Man」を、コリン・ファース、二コール・キッドマン、真田広之さんという素晴らしいキャストで映画化した本作は実話であるがゆえに終盤の展開が胸に迫る。
名作「戦場にかける橋」でも描かれたタイとビルマを結ぶ泰緬鉄道建設を題材に、その現場で辛酸を嘗めたことがトラウマとなって苦しむ主人公が、その過去と対峙していく心の旅が描かれていく。
蒸気機関車に魅了され、鉄道愛好家になったエリック・ローマクスには、人生の節目節目で鉄道によって喜びや悲しみ、幸せや苦しみがもたらされる。
戦争による心の傷を抱えたエリックは、列車の中で出会ったパトリシアに一目惚れし、遂には結婚して幸せな生活を手に入れる。
しかし幸せな結婚生活でも、忌まわしい過去は容赦なく彼に襲い掛かり、安息を与えない。
やがて彼は、トラウマの元凶である当時の憲兵隊の一員である永瀬隆が生きていて、現地でガイドをしていることを知る。
そのことに対し何らかの行動を起こすことを逡巡していた彼は、妻の勧めや戦友の強い「メッセージ」を受け、意を決して忌まわしい過去の「シンボル」である永瀬に会う為に旅立つ。
エリックと永瀬が再会してからの展開では、エリックが過去に受けた目を覆いたくなるような行為も描かれていくので、観ていて胸が張り裂けそうになる。
初め映画の内容から、戦時下における日本軍の捕虜に対する残虐行為を弾劾するものだと思っていたが、それだけではなかった。
この映画で描きたかったのは、戦後数十年経って再会した「被害者」と「加害者」が過去の「罪と罰」を見詰め直し、それを乗り越えていく姿にあると思う。
エリックとその妻パトリシアの夫婦愛もさることながら、その後に築かれた友情に胸が熱くなった。