よーだ

300 スリーハンドレッド 帝国の進撃のよーだのレビュー・感想・評価

3.0
紀元前480年。古代オリエント世界を統べた大帝国アケメネス朝ペルシャがギリシャへと攻め込んだペルシャ戦争。灼熱の門(テルモピュライ)での激闘と時を同じくして、エーゲ海でも激戦が繰り広げられていた。


◆plz come back SPARTAAAAAAAA!!!

アケメネス朝ペルシャの大王Xerxes(Rodrigo Santoro)によるギリシャ遠征。ペルシャ軍が勝利こそ収めたものの、たった300人のスパルタ軍に1,000,000もの大軍勢が押し止められてしまった《テルモピュライの戦い》を映画化した前作。

誇り高きスパルタ民族の魂と、アゴゲと呼ばれるスパルタ式の教育(訓練)に裏打ちされた強靭な肉体。そして英雄的指導者である国王Leonidas(Gerard Butler)の雄姿。観る者の心を震わせ、大ヒットを記録した《300》の続編は、後のプラタイアの戦いではなく、テルモピュライの戦いと同時期に勃発していた《アルテミシオンの海戦》そして、《サラミスの海戦》を描いた。メガホンを取ったのはNoam Murro監督。(ちょっと存じ上げませんでした。)

圧倒的に数的不利なギリシャ連合が、強大な侵略者に対して《地の利》と《知恵》を駆使して善戦した史実上の戦いであるという点、場所も年代も同じという点においては、前作のDNAを継いでいるといえる。

しかし、前作でのスパルタ王と兵士たちの勇姿と、Zack Snyder監督の魅せる芸術的なシーンの数々に魅了された身としては、タイトルこそ《300》なれど、スピンオフやアンソロジーといった言葉が脳裏をよぎった。


◆ヘロドトスからの脱却

ポリスと呼ばれる都市国家が数多く乱立していた古代ギリシャ。そんなギリシャで最強の重装歩兵部隊を擁する戦闘民族スパルタがフィーチャーされていた前作に対して、今作では古代ギリシャ屈指の海軍を持ち、世界遺産にも指定されているパルテノン神殿を有する(作中で焼け落ちていました)有力な港湾都市国家《アテナイ》と、アテネ海軍を創設した軍師Themistocles(Sullivan Stapleton)にフォーカス。

前作と比較して圧倒的にファンタジーで二次創作色の強い作品になっていたのはちょっと舵を切り過ぎでは…。

ギリシャ連合を指揮するThemistoclesと死闘を繰り広げるのは、ギリシャ兵に家族を殺され、自身も虐げられた過去を持つペルシャの参謀Artemisia(Eva Geen)。彼女。創作ですよね?前作がむさ苦しい筋肉モリモリ漢祭り(嫌いじゃない)だった故の反動なのか、知的で冷酷なEva Geen姐さんを起用して、サービスカットまで盛り込んだ今作。

《アルテミシオンの海戦》になぞらえて、ギリシャ神話の月と狩猟の女神《アルテミス》を模したキャラを作ったんでしょうね。姐さんが弓を引くシーンや、月が強調された演出は意識的に盛り込まれんだと思います。悪くは無いんだけど、前作の系譜という意味ではもうちょっと《歴史》よりに仕上げて欲しかった。

前作でビジュアル大賞だったペルシャ大王のXerxesについてバックボーンが描かれていた今作。《月の狂気》にあてられて闇堕ちした展開はArtemisiaという創作キャラの特性と関連して面白い設定だとは思うけど、お陰でXerxesが《神秘的なヤバい奴》から《ちょっと可哀想なヤバい奴》に格下げされてしまった感が…。


◆前作と比べなければ、、、

戦闘シーンの疾走感あるカメラワークは良かったものの、血飛沫が今作はやり過ぎ。出血大サービスが裏目に出た感じ。前作くらいが丁度良かったのに、今作はちょっと品がない。

全体的に薄暗いシーンが多く、前作のような色彩感が無かったのも残念。監督の違いなんですかね。それとも場面の違い?何にしろ前作の方が良かったなぁ。

美術は今作も精緻でハイクオリティでした。当時の海戦における主戦力《三段櫂船》は、外観も内部設計もとても良かったし、漕ぎ手(スパルタ側は奴隷階級、ギリシャ側は無産市民)の扱い方もハッキリ別れていて、再現度高く作品に落とし込もうという制作サイドの心意気を感じた。
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