こたつむり

極道恐怖大劇場 牛頭のこたつむりのレビュー・感想・評価

極道恐怖大劇場 牛頭(2003年製作の映画)
4.0
♪ 地獄へようこそ。マザファッカァァー!

「シュール」「不条理」「意味わからない」
なんて言われてしまうほどに迷走している作品ですが、何故だかピタリとツボにハマりました。全身の細胞が泡立つほどに面白かったです。

仕上げたのは“愚作の貴公子”三池崇史監督。
思うに、彼は打率一割のホームランバッターなのでしょう。芯に当たれば軽々と場外まで飛ばす才能をお持ちですが、天才が評価されるのは死後ですからね。現世は世知辛いと思います。

そう考えると本作で描かれた世界は、監督さん自身が現世で感じたもの…なのかもしれません。確かに認知されない存在からすれば、現世こそが地獄。不条理で常識も経験も通じない異様な世界に見えても納得なのです。

そう考えるとタイトルも秀逸。
西洋で“黒き山羊”が棲むのは魔界との接続点のように、東洋では牛頭馬頭は地獄の獄卒。物語が“理解できない”ものだと最初から提示しているのです。

また、地獄ゆえに軽妙なのも当然の話。
何しろ、自分と関係ない場所で他者が苦しむ姿は“喜劇”と紙一重。それを「不条理だ」と忌避するのは…きっと善意に満ちた証なのでしょう。だから、本作を大々的に「面白い」と評価するのは避けた方が良いのかも。

それに、吉野公佳さんが艶やかで思わず前屈みの姿勢になったのも…内緒にしたほうが良さそうですね。勿論、それを目当てに鑑賞したわけではありませんよ…むふふ。

ちなみに、本作の舞台は名古屋ですが“コーヒーと一緒に茶碗蒸しを食べる”のは一般的なのでしょうか?考えてみれば“あの”味噌バターもメジャーになりましたが、普及する前は驚きましたしね。やはり、名古屋は異界ですな…(←問題発言)

まあ、そんなわけで。
背筋が寒くなるのか、腹を抱えるのか、それとも不条理さに嫌悪するのか。確実に人を選ぶ作品。鑑賞する際は、それを前提に臨んだ方が吉です。あと、牛乳が好きな人も覚悟した方が良いでしょう。
こたつむり

こたつむり