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パリ、ただよう花のesのネタバレレビュー・内容・結末

パリ、ただよう花(2011年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

パリ18区。17区18区19区で映画分布図を作りたいくらいにパリの複雑性を描く際にはこの移民が多く住む地域が舞台となる。

学歴を持ち自ら自由な道を選び取ることもできるのに絶えず男性に束縛される事を望む主人公と、民主化運動が頓挫したままエリートとして育て上げられ国家に管理される事を受け入れる中国国民の姿を重ね合わせている。

属性によって変化するマイノリティとマジョリティの描き方も上手い。
フェミニズムに関する講義の際に他人事として意識を他所に飛ばしていた男子学生のように、マジョリティによる無自覚・無関心・無配慮を感じるシーンが作中に沢山散りばめられている。それがアジア人であり女性であるホアに対してだけではなく、時として白人で男性ではあるが低学歴のマテューに対しても向けられる。
特にマテューがホアの友人達が集まる食事会に合流するシーンが印象的。唯一共通の話題にできそうな「女の扱い方」を得意げに話しマウントを取ろうとするマテューの姿が痛々しい。
全体を通してホアだけではなくマテューに関しても丁寧に描いていたのが良かった。仕事仲間や故郷の炭鉱町の人々と比べればマテューはそこまで保守的ではない。中国人であるという理由で偏見の目で見てきたり、ステレオタイプな中国人像を押し付けてくる人々とは違い、彼は知ろうとする姿勢を初対面時にホアに対して向けていた。生まれた環境が押し付けてきた男らしさに雁字搦めになって最低な行動を繰り返していた彼をホアが見限れなかった理由はそこにあると思えた。そして彼の故郷、家族を見たホアがマテューは彼自身が生きるコミュニティの中でマイノリティだったのだと察するシーンの描き方も上手い。(読書していたり、壁に大黒様らしき絵があったり、あの盗んだサーベルも結局売れずに自室に飾っている所とかもその後のホテルへ向かう展開への説得力となる)

そんな演出の巧さに唸りながらも、正直冒頭は性描写が苦手なので無理かもしれないと思いかけた。揺れる画面も画面酔いしやすい人には辛いかもしれない。けれど最後まで観て良かったと思える作品だった。
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