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ドリンキング・バディーズのnetfilmsのレビュー・感想・評価

ドリンキング・バディーズ(2013年製作の映画)
3.9
 イリノイ州シカゴ、「レボリューション」という名のクラフト・ビールの醸造場、社員10人あまりの小さな会社。米・コーン・スターチを濾過装置で混ぜ合わせ、熱心に麦芽を作る男ルーク(ジェイク・ジョンソン)は麦芽作りに夢中になりながら、通りがかった事務員で紅一点のケイト(オリヴィア・ワイルド)と2.3会話をする。社員10人あまりの小さな会社には男たちの野太い声が響き渡り、彼女は唯一の女手として社長から広報の仕事を任されている。月9度の試飲会、一般客への結婚式用の「レボリューション」ビールのプロモーション、鳴りっぱなしの電話の応対をしなければならないケイトの毎日は忙しい。お昼休み、ギリシャ風サラダを拡げるケイトの元に、発酵作業を中断したルークが現れる。彼女のサラダを横取りする茶目っ気のあるルークとケイトは職場きっての仲良しであり、心通じ合う戦友のような間柄だった。「エンプティ・ボトル」という名の場末のビリヤード場、たむろする社員たちの輪の中にケイトの姿がある。ルークは婚約者のジル (アナ・ケンドリック)と連れ立って、ビリヤード場に来ていた。自分以外、全てクラフト・ビールの社員という気まずさに耐えかね、ジルはすぐに帰ると伝える。渋々ルークは彼女の頼みに応じ、少し早く帰路に着く。ケイトはビリヤード場を出た後、付き合って8ヶ月になる録音技師の彼氏クリス(ロン・リヴィングストン)の部屋を訪ねる。

 『新しい夫婦の見つけ方』同様に、順風満帆に見えた2組のカップルが別荘を訪れたことにより物語は駆動する。ルークとその彼女のジル、ケイトとその彼氏のクリスは、週末をクリスの別荘で過ごしたことから互いの関係性にズレが生じ始める。潔癖症と不潔、アウトドアとインドア、計画性と無計画などの男と女の意識のズレを一通り示した後、結婚間近のカップルは友人のパートナー同士を見比べながら雷に打たれたような衝撃を受ける。意中の相手がいながら、もう一人の異性を思うことは罪なのか?映画は愛する存在がいながら、もし別のパートナーだったら自分の人生がどうなるかというシュミレーションの感情を4者4様に湧き上がらせる。明らかに結婚適齢期を過ぎてしまったアラサー男女の恋は決して衝動的ではないが、互いの将来を予見してしまったバツの悪さに満ちている。口火を切ったのはクリスだが、恋愛のパワー・バランスが崩れたことで、彼らは互いを意識し始め、平和だった関係性に亀裂が走る。『新しい夫婦の見つけ方』同様に、男女の些細な機微を淡々と描いたジョー・スワンバーグのリアリティ溢れる描写力が素晴らしい。今作でもヒロインは感情の檻に自ら鍵をかけ、最後の一線を越えることを踏み留まるのだが、その葛藤の描写が素晴らしい。2人の恋の行方に立ちはだかるのは今作でも突発的な大ケガに他ならない。ヌーヴェルヴァーグのような「自然主義」を根元に据えた低予算なりの即興スタイルは独自に進化を遂げ、男女の心の機微やすれ違いを見事に据えた世界の恋愛映画の新潮流となる。ラスト10分間の心底腑に落ちる展開の清々しさとカタルシスは圧倒的な共感を呼んだ。
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