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嗤う分身のodyssのレビュー・感想・評価

嗤う分身(2013年製作の映画)
2.5
【ドストエフスキーじゃなくカフカみたい】

ドストエフスキーの『分身』(『二重人格』という訳題もある)の映画化だそうです。

原作は読んでいないんですが、原作があくまで現実のロシア人を主人公にしていた、つまり、少なくとも作品の出だしではリアリズムが土台になっていただろうことから見ると、この映画はドストエフスキーというよりはカフカみたいな作りになっています。つまり、現実世界から隔絶した世界の中で物語が進行する。

ただし、それで分身、別の言い方をするとドッペルゲンガーというテーマが濃厚に描けているかというと、逆のような気がします。舞台が異常に見えるので、かえって自分そっくりの分身が現れるという現象も「あり得る」ように思われてしまい、異常さが減じてしまっているのです。

その意味で、この映画は設定を間違えたのだとしか思われない。普通の世界に異常な事態が起こるからこそ面白いので、最初から世界が異常なら、何が起こってもおかしくないというところを制作側は計算に入れていなかったのでしょう。

私の好きなミア・ワシコウスカがヒロインをやっているのはいいけれど、彼女の魅力が十分に発揮されているとは言えないのも残念。ちゃんとベッドシーンを入れて下さいな(笑)。
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