このレビューはネタバレを含みます
ドストエフスキーの『分身』の映画化。原作は未読。この映画の良かったところ、それは何と言っても世界観だ。過去とも現在とも言い難い時代設定や突然昭和の歌謡曲が流れたり、謎のSFがテレビで放送されたりととにかく不思議な作品だった。『1984年』を読んだ時に頭で想像した世界がそのまま映画になった作品だった。
ストーリーは『複製された男』、『仮面ペルソナ』、『ファイトクラブ』、『テナント/恐怖を借りた男』的。と言ったらネタバレになってしまうかもしれないが。
内向的で大人しい男の自分を変えたいという意識が分裂したために生まれたオルターエゴに人生を乗っ取られそうになり、自分の命と共に抹殺しようという話だが、終盤の自殺シーンと序盤の男の自殺シーンが被っている点や病院でのやり取りなどから、映画全体が自殺を起こした主人公の願望が夢として具現化したものと捉えることもできる。『マルホランド・ドライブ』のような。
人によって解釈や評価が分かれる作品だと思うが、その独特の世界観から退屈はしない作品だと思う。
(ドストエフスキーの原作も読んでみたいなと思った。でもドストエフスキーの作品で全部長いんだよな…)