牛猫

わたしの名前は...の牛猫のレビュー・感想・評価

わたしの名前は...(2013年製作の映画)
3.5
父親から虐待を受ける少女と、トラックの運転手を営むスコットランド人が旅をしながら心を通わせる話。

子どもにとって最も安心できる相手、そして子どもを最も守らなければいけない立場にある存在が親だと思う。あの父親は人でなしだ。上手くいかない現実を娘にぶつける最低なクソ野郎だった。
そんな父親から逃げるように学校の遠足でやったきた浜辺。偶然停まっていた一台のトラック。少女にとっては駆け込み寺だったのだろう。

そこからのロードムービーは至って平和。
自然豊かで長閑なボルドー地方の風景を見ながら心を通わせていく2人。
時々危なっかしい場面もあったけれど、強面のおじさんと傷ついた少女の言葉の壁を感じさせない関係にほっこりした。
スーパーで下着を買うときの店員さんや客の叔母さんのおせっかい具合が微笑ましい。
途中森の中で踊るアジア系の白塗りダンサーにも目を引かれる。落ち着いた音楽や、突然フィルムカメラのように変わる映像もセンスが良い。このあたりのセンスはいかにもファッションデザイナーらしい。
しかし、目的地のない逃避行には悲しい結末がつきもの。どんなに楽しそうなシーンであってもその先にある悲劇的な展開がチラついて切ない。

フランスのファッションデザイナーである彼女が描きたかったのは何だったのだろう。映像は美しかったが、あまりにも救いのない話だった。
牛猫

牛猫