katsu

インセプションのkatsuのレビュー・感想・評価

インセプション(2010年製作の映画)
4.8
【MY生涯映画No.5】

アイデアを植え付けろ…夢に潜る驚異の映像美

はっきり言って、最高です。
”これぞ真の映画!”と言わざるを得ません!

私には本作を無性に観たくなる瞬間が、決まって半年ごとに訪れるんです。
季節が変わりしばらくすると唐突に「あ、インセプション観なきゃ」と脳が勝手に信号を出すので、特別に意識することもなく、何の疑問さえ抱かずに、自然と手が伸びてしまうわけなんです。
何かの病気でしょうか…不思議です…
レビュワーさんにも”同じ様な症状が出るぞ”という方がいれば是非コメントして欲しいぐらいですw

そういえば私の映画友には、1週間に1回は「ハリーポッター」シリーズのどれかを観ないと禁断症状が出てしまうと言っていましたね。
すると、私の”インセプション病”も世間では割とメジャーな症状の一つなのかもしれません。

というわけで、やはり今年も例の症状が顔を出し、無意識のうちにブルーレイを再生していました…

前置きはこれくらいにして早速感想に!

知らない人はいないほど超有名映画ですし、考察やストーリー解説のブログなんて星の数ほどあるでしょうから、私のレビューではかなりライトな感じで行きたいと思います。
何度も観てるので決してフレッシュな感想ではないと思いますが…

・ディカプリオがクール
・1シーンのアクションだけでも十分濃密かつ編集が凄い
・少年の妄想のようなストーリーをクールに仕上げる手腕
・夢の創造だなんてクリエイター側からみると最高の映画だったはず…私も参加したかった
・何度観ても分からないものは分からない
・ストーリーの構造が難解?いやいや…
・圧倒的スケール感と映像の妙
・お金かけ過ぎ
・俳優陣だけで飯25杯くらいいけそう
・渡辺謙渋い
・ノーラン監督はやはり天才…彼の脳がどうなってるのか、もはやノーランの夢に一度潜ってみたい
・エレンペイジ&マリオンコティヤールの美麗さ
・夢の中での彼女とのキスこそがこの映画のハイライト
・やはり何度観ても面白い

◆あらすじと難解と言われる理由◆

主人公のコブ(ディカプリオ)は他人の夢に侵入して重要な情報を盗み出す雇われドロボウ。
ある日、大企業のトップであるサイト―(渡辺謙)に、競合会社の社長の御曹司にとあるアイデアを植え付ける”インセプション”の仕事を依頼される。
その危険性を知るコブは迷うものの、大きな見返りを条件に承諾。
最強のメンバーを集めていざ深い夢の中へと潜り込むのであった……。

どこが難解なんだよ!と怒る方は一度観てください。
夢のなかで夢を見て、その夢で夢を見て、一個上の階層の夢で起きた出来事が一個下の階層に影響したり、急にここで死んだら虚無に落ちるとか言われたり、それはもうスピーディーに話が進んで行くので、初見ではまず混乱します。
え?簡単でしょ?と感じる方は、まずしっかり映画を観ていないか、または理解の天才です。
ホントに細かいところまで理解しようとすると様々な矛盾が生じてくるんでその内に思考が飽和します。

深く潜るほど時間が倍々に長くなるってのはユニークで面白い設定ですが、これが諸悪の根源だったりします。
上層のキックで起きる。
下層の死亡で起きる。
それを繰り返してほぼ同時に連続的に起きるとか、より深く潜って時間を稼ぎつつ丁度いいタイミングで戻ってくるから君はここで待っててとか、ここはあいつの夢の中だけど潜在意識は共有してるから云々とか、さらには電気ショックで蘇生するなんてでてきて、混乱は加速します。

加えて、虚無(英語では”linbo”)という日本人には馴染みのない概念が出てくることも原因の一つでしょう。
limboとは、簡単に言うと地獄でも天国でもない場所のことです。
日本語では地獄の周辺と書いて辺獄と訳すそうですが、この単語を聞いてキリスト教の人達がイメージする光景やなぜ夢に潜りすぎるとlimboが出てくるのか?は私にもよくわかりません。

でも、そんな細かいことは考えなくてもいいと思います!

考えるな。感じろ。と言いたくなるくらい映像がよくできているんで、なんだか難解だなあ、と思いながら単純に楽しめばいいんです。
何かが引っかかった際には「まあ夢の中の出来事だし」と、魔法の言葉を口ずさめばあらゆる疑問は解決されます。

ですが、インセプションを観て簡単だと豪語する人には、なんとなく嫌な印象を覚えるのはどうしてなんでしょう。
難解であることを容認してから、考えることを放棄して楽しんでほしいなと思うわけです。
楽しみ方は人それぞれ…ですね!

◆圧巻のアクションシーンと映像美◆

見所はなんといっても、映像!

何でもアリな夢の中をどう映像にするのか、制作陣の手腕が試されますが、そのアイデアと完成度が本当に素晴らしい!

日本の城のようなモダンな和風建築の中での立食パーティー…
回転する部屋や無重力のホテルでの格闘…
エッシャーのだまし絵のような階段…
二つに折りたたまれたパリの街…
雨のロサンゼルスでのカーチェイスと道路を削りながら突っ込んでくる列車…
雪山の要塞での銃撃戦…
波に浸食される氷河のように崩れ去るビル…
時代も様式も異なる建造物が格子状に並ぶ街…

もうこれらをただ眺めるだけでも十分ワクワクしますし、登場人物たちが夢の世界の魅力に取りつかれるのもわかる気がします。

ちなみに私のお気に入りは、夢の夢の中での傾くバーのシーン!
グラスの中の水は傾くのに、グラスや椅子などは転がっていかないという違和感の表現が絶妙!
あれなら確かに、ここは夢の中だ、と御曹司も納得するでしょう。
でも20度以上は傾いてると思うんですけど、よく自然に耐えてるなと毎回感心しています。

ホテルでの格闘は無重力シーンも含めてほぼ実写で撮影しているそうですよ!

夢の中だからCGでもいいかってなりそうなところを、実写にこだわって撮影し、さらにCGや映像処理もうまく組み合わせるという、作品に対する高い情熱も素晴らしい!
おかげで観る側はより夢の世界に入り込めます。

何度観ても面白いのはきっとこういう細かなこだわりの積み重ねあってのものなんだろうなと感服の極み。

それにしてもたった数分のワンシーンに膨大なお金をかける驚き!

エッシャーの描いたペンローズの階段を実際に建築するだけで、一体いくらしたんでしょうか。
これが総製作費の1億6千万ドルの貫録ってやつですね。

◆豪華俳優陣の嵐◆

レオナルド・ディカプリオ
ジョゼフ・ゴードン=レヴィット
マリオン・コティヤール
エレン・ペイジ
トム・ハーディ
キリアン・マーフィー
ピート・ポスルスウェイト
マイケル・ケイン

こんな人達と肩を並べて出演しているのが、ケン・ワタナベ!

もし筆者がこの中にいたら1秒も経たずに脳が沸騰して爆発するでしょうね。
すごいです渡辺謙さん!
しかも監督の希望で、サイトは初めから渡辺謙さんの当て役だったというのだから驚きです。
日本人である必要性はないにもかかわらず、そのためだけに日本人という設定にしたんだとか。

でも、バットマンシリーズと俳優被りまくってます。
ノーラン監督は、一度使った俳優を繰り返し起用するタイプなんでしょうね。
マイケルケインはこれまた私の大好物である「インターステラー」にも出演してますしね!
ダークナイト・ライジングのマリオン・コティヤールを観てから、彼女が出てくるとあの絶妙にアンバランスなイメージを思い出してしまうというか、ほんの少し笑いがこみあげてくるようになってしまったのは内緒です。

それはそうと、私はエレンペイジが大好きです。

好きな女優の中ではかなり上位にランクインしてきます。いかにもなハリウッド女優ではなく、自然体でナチュラルボーンな雰囲気が好きなんですかね。
インセプションでは、夢の世界をディティールまで想像し創り上げる、”設計士”の役柄ですが、これまた結構はまっています。
好奇心が強く想像力豊かで頭の回転が速い美術センス抜群の大学生を、いつも通り自然に演じています。

彼女の唐突なキスシーンは外国人に好評だそうです。
ウィットに富んだ軽いやりとりって好きですよね、彼ら。
もちろん私もあのシーンが大好きなんですが、できることならジョゼフ・ゴードン=レヴィットになりたいと、観る度に切望しています。

◆ラストの解釈◆

ここからは少し真面目に…
軽いネタバレになるのでご注意を!

インセプションを語る上で避けては通れない話題ですが、皆さんはラストシーンをどう解釈されているでしょうか。

映画に限らずですけど、作品の解釈なんて要は観る側の自由なんで、これが答えだってのが劇中で明確に示されないのであれば、人それぞれなんですよね。
これに関しては好みが別れるとは思いますが、そういった自由をあえて設けてくれる作品は結構好きだったりします。

インセプションの場合、コマが回り続けるのかそれとも失速して転がるのか、つまりそこは現実なのか夢なのかという判断が下されないままエンディングを迎えます。
なんだか後味が悪いと思うかもしれませんが、そこが現実でも夢でも対して違いはない気がします。
というのも主人公のコブが辛い過去を乗り越えて、幸せな生活に戻れていればそれでいいですからね。
コブは最後に子供たちを抱きかかえ、コマの行方なんて見てませんし、つまりはここは夢だここは現実だなんていうことで辛い出来事から目を背けてきた彼の、葛藤からの解放を意味しているのではないかと思うわけです。

と私は勝手に解釈しています…

本筋だけを追えば夢の中での闘いを描いたアクションSFですが、内包するテーマは主人公の成長ですので、こう解釈するのが自然かなと感じました。

最後の最後にはコマの軸が少しぶれ始めているように見えなくもないですけどね。

でも、あそこは実は夢で、現実のコブはまだ過去に向き合えずにただ逃避しているだけ、なんていうダークな終わり方もいいと思います。

まあこういう議論も想定済みなんでしょう。
ホントに憎い終わらせ方をしますね。

夢か現実か、と聞くと「胡蝶の夢」を連想します。
ここは実は夢なんじゃないか?という誰もが共感できる普遍的な疑問、簡単に言えばあるあるネタを組み込んでくるというのも上手いですね。
ノーラン監督という人は、人間が何に興味を示しそれをどう提示すれば効果的に映るのかが、明確に理解できているんでしょう。
少々持ち上げすぎに見えるかもしれませんが、言われてみれば確かにと頷けるような簡単なことを、そつなく緻密にやってのける才能の持ち主だと私は思っています。

まさにそれこそ、彼がヒットメーカーたる所以でしょう!

◆最後に◆

ライトと言いつつもかなりの文章量になってしまいました…
私の生涯映画に食い込む作品は勝手に筆が進むのでしょうねw

音楽にザ・スミスのギタリストのジョニー・マーが参加しているとか…その後の世界はどうなったんだよとか…あの夢に入る装置なんなんだよとか…アーサーとイームスのくだらない小競り合いが好きだとか…探せばまだまだ話題は尽きないわけですが、語りすぎるのもアレなんでここまでで抑えておきましょう。

皆さんもこれを機に”インセプション病”になってみてはいかがでしょう!
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