ダークナイト観といて、これ観てないとかタワケめ！とフィルマ仲間の方に推薦され、今更ながら鑑賞しました。
面白い。
知的なのにエンターテイメント。
観た後、絶対誰かと話したくなる。他の人の解釈を聞きたくなる。
恐ろしいアイディアの多重構造。何をどうしたらこんな設定、こんなストーリー、こんな映像が思いつくのか。
もともと、夢を扱った話だというくらいの前情報は知っていました。冒頭から「二重の夢」なんて、普通なら終盤に持ってきそうなテクニカルな技を見せつけるところに、さっそく監督の漢気を感じます。相手の意識からアイディアを奪うという発想にも心が躍るし、夢の中ゆえに本人の抗えない潜在意識が投影される仕掛けにも驚くばかり。過去のトラウマがフラッシュバックするのでなく、実際に目の前に現れてしまうというのだから。
夢であるがゆえ、高次元の存在(眠っている場所)の影響を多層に受ける発想が本当に素晴らしい。一つの層の中だけでも手に汗握る攻防なのに、より上位層から受ける影響によって立体的な戦局が構築できてしまう。重力の狂った空間での戦闘はその映像だけでも驚かされます。
あとからもう一度みて気付きましたが、インセプションのミッションだけで一時間超えてるんですね。全く長さを感じない。おかしい。潜ると20倍の時の長さを感じるはずだ。むしろ短く感じるなんて。
夢の中のミッションだけでなく、コブの罪の意識がダイレクトに投影される見せ方も画期的。ミッションと同時に、コブ自身が無意識に過去の心的な傷と闘う話としても魅せてくれる。潜在意識のモルに語りかける姿は、まるでコブ自身が自分の心を抱きしめているかのよう。
そしてラストの意図的に複数の解釈ができるように仕込まれた終幕で完璧にノックアウトされました。
たったこれだけの単純な仕掛けで、見方によってここまでの物語全てが、別の意味を帯びる可能性さえある。だから複数回観たいと思うし、他者の考えに触れたいとも思う。
全く、夢にダイブして知識を盗むワンアイディアだけでも大したものなのに。幾重にも層を重ねた仕掛けと、終わらない余韻まで投げかけてくるなんて、感服するしかない。
ノーラン監督に見事にインセプションされたと、誰しもよぎったはず。
