TERUTERU

インセプションのTERUTERUのレビュー・感想・評価

インセプション(2010年製作の映画)
5.0
[ Inception / インセプション ]

 あなたは他人が寝ている夢の中に入れるとしたらどうする?存在しない世界、あるいは他人の想像。だが想像にも原点がある。「なぜこの人の夢に中にあんなモノがあるのか」、「なぜこんな想像ができるのか」。その原点こそ{idea/アイデア}、その人の過去から生み出された代物か、ましてや新しく生み出されるその人のアイデアなのか。どちらにせよ、あなたはそのアイデアに魅了された。そして賢い人ならあなたが今おかれている立場に気付くであろう。
だれも邪魔はできない、死ぬことはあり得ない、自身も夢の産物
 { 操作可能な夢の世界 }に立たされていることを。
物質は持ち帰れないが、アイデアは記憶すればいい、

 Extraction/エクストラクション...「抜き取り」「引き抜き」「摘出」
 Inception/インセプション...「始まり」「開始」「発端」【植え付ける】

 可能なのはこの2択、欲しいのは未だ見ぬ未来の設計図とそのアイデアの特権。
 【アイデア】を奪うには、誰も予想できない【アイデア】で奪え。

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 『TENET』公開直前!クリストファー・ノーラン祭・第3弾『Inception/インセプション』!!SFアクションの中でも超が付くほどの大傑作。C・ノーラン想像力がスゴイ!凄すぎる!!脚本を自身で手掛ける今作、人の想像力をずば抜けて凌駕している!まるで異世界から訪れた創造主だ。
 とわいえ、他人の夢の世界に入ること事態は誰もが一度は想像したくなるところ。だがそこからのシナリオがC・ノーランは違う。夢の世界から2階層、3階層へ続く夢の世界。現実で起きた反動が夢へと伝わるタイムラグ。潜在意識の強化による武装集団、夢の世界での戦い方。どれも予想もできない芸術的なアイデアは本当に夢の世界が実在するかのようなシステムとそこでのルール。見事な脚本設計力、この夢の世界でのシステムが実在するかのように私たちの脳内に植え付けられたみたいだ。。。

 ストーリーは『オーシャンズ11』のような特殊なスキルを持った強盗集団が宝物を奪うようなの物語だが、『オーシャンズ11』同様この作品の見どころは宝(記憶)を奪うことが重要ではない点。宝を奪う事はおまけでありカジノ王へ仕返しが目的の『オーシャンズ11』。では『インセプション』というと、ミッションの目的は記憶を植え付けること。だが主人公の「コブ」の本来の目的は指名手配である犯罪歴の消去とアメリカに残した子どもたちへの再開が真の目的。ただの記憶を盗む金儲けの犯罪者ならあまり共感ができないと思う。だが目的が金儲けでもなく家族の為であるパーソナルな理由であれば観る者に対してコブを応援する観方になるのであろう。非常に良いつくりだ。
 そこにもう1つ「コブ」過去のトラウマが感動へのラストに続くキーパーソン。物語の作戦中、度々コブ率いるプロフェッショナル集団を阻むのは潜在意識の武装集団だけでない、コブのトラウマが何度も立ちはだかる。それは消えてほしくない記憶の様に、彼は【夢】の中で自身の【過去】と【未来】の為に藻掻き苦しみながら戦いに挑む。まるで現実ではありえない様なドラマティックな内容と素晴らしい映像体験がセットで夢のような映画が味わえる今作だ。

 今回は夢について、

 誰だって目を閉じれば楽しくて明るい夢物語を観たいはず。目を開ければ楽しかっただけが残る記憶と続きをひたすら連想しながら徐々になにを見たか薄れ忘れてしまう夢の世界。
 だが続きを観たくない悪夢のような夢に何度も飛び込むことだってある。夢から生まれた物ではなく現実の記憶から構成された夢の世界。もしかすると、もう夢にしか存在しない人物、時間、場所そのひと時なのかもしれない。たとえ危険と警告が鳴るのはわかっているのにあたかも薬物に手を伸ばしているかのように望む夢。もう一度出会える、もう一度あの場所、あの光景、あの瞬間が。たとえ次の瞬間に地獄の惨劇になろうとも、あの時の後悔を覆せるのならば夢であろうが何度も変えてあげたい未来の光景。そして気付けば現実へ。夢だけど変えてみたい未来はある。

 夢は見る者が決めるのではない、なんの前触れもなく訪れる眠気と行きついてしまう夢の世界。それを操作してはならない、夢とは禁断の代物だ。人の感情と記憶を操作するような物なのだろう。この映画の最後ではインセプションさせるターゲットである「ロバート」は「アリアドネ」の設計により造られた父の真相を知り未来が変わる。ロバートにとっては真実を知れハッピーエンドだが、実際は「サイトー」のライバル企業が消えるわけだ。もしロバートの父の会社の社員だとするとバットエンドだ。といっても実際の父親も「サイトー」の意見に似たりよったりして。。。 
 
 そしてもう一人「コブ」だ。彼は過去のトラウマから追われる身であったが物語終盤にトラウマの元凶であった「モル」に対し虚無の世界で最後の2人の会話。「プロポーズを覚えてる?」「一緒に歳をとろう」とそして「もう十分歳をとっただろう」この掛け合いにモルに植え付けていた、

「これは現実ではない、現実に戻るには死ななければならない」

 現実も夢でもない一緒に生きた【真実】がお互いの呪縛を解き放ったのだろう。モルは現実では死んでしまったが夢では生きている。
 そうではない、お互いの望んだものは当に叶っていることに。夢で後悔を何度も救いようのない1ページを繰り返すよりも現実で受け入れる事が彼への救い。もう2度も自分の手で同じ人を失いたくない真実へ変わっていく事に。勝手な解釈だが最後にコブは自信に「モルは亡くなった」ことと「彼女との約束をはたした」多くの悲しみを消し去るほどの記憶を自身への立ち上がる飛躍にとインセプションしたのだろう。そして夢から覚めたら新しい人生と待ち続ける家族のもとへ。

 夢は現実と紙一重。記憶というのは限りなくもろく翻弄されやすい、だから夢に溺れる前に現実を少し触れ回す。

 語りだすと止まらない、感情移入しすぎてまとまらないぐらい個人的に好きな感動作品です。。。

 C・ノーラン作品で大好きな今作がリヴァイバル上映して本当に嬉しかった!しかも10年も前の作品をIMAXで鑑賞できることに感動。これも『TENET』の公開のおかげ!
 さて『TENET』上映まで残り僅か!つい先日トークイベントにも参加して更に期待度が上がる!!はやく見たい!!がその前になんと第4弾!C・ノーラン祭最後の砦を飾るのは『インターステラー』超が付くほど難解SF大作。物理学は難しい!だが『TENET』はこれ以上に難しかったりして...そんな難問映画にチャレンジしに観にいってらっしゃい👋


2020/№R029
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