つかれぐま

インセプションのつかれぐまのレビュー・感想・評価

インセプション(2010年製作の映画)
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<隠されたコブの秘密>

観た者の心にインセプション
これは正に映画そのもの。

本来はエクストラクションを専門とするコブのチームに、サイトーはインセプションを依頼する。その結果、サイトー、コブたち、そして狙われた若社長までもが、自身にとっての幸福を手にして終わる。コブのラストも(あれが現実であれ非現実であれ)コブにとっては最良の結果だ。エクストラクションでは実現しないこの着地は、映画という虚構が、虚構であるがゆえに観た者の心を豊かにする(これもインセプション)。その構造を表現した作品なんじゃないかな。

若社長の心にインセプションする「表」ストーリーと、コブの記憶をめぐる「裏」ストーリー。この二つが並行して進み、最後には「裏」が表になったような印象を残すエンディングだった。初見時はあれは現実と信じて疑わなかったが、再見したら夢とするのもありかなと思えてきた。

★★以下ネタバレ★★

私の愚考は、
・コブの子供たちは既に死亡
・死因は作中に何度も登場する列車事故
・モルはその死を受け入れているがゆえに、子供のいない現実への滞在を拒否
・逆にコブは死を受け入れなかったから、最後には子供に再会

どんな親でも、子供を現実世界に残して深い階層をさまよったり、ましてや自死などという選択をするはずはない。つまりコブとモルが迷宮に陥った原因は、子供との死別以外には考えづらいのではないかと・・。本作が難解なのは、1つには現実と夢の境界線のあやふやを観客に体感させるためだと思うが、もう1つはコブが心の奥深くにしまい込んだ「真の悲劇」を、観客にも分からないように隠す。そんな意図があったのではないかと考察した。

前半1時間もかけてルール説明しておいて、それでもいざミッションが始まってから「実はね・・」というのが結構あったり、相変わらず粗が多いのもノーランらしいが、これも確信犯的にやってるんだろうな。そういう所をスルーできちゃう大胆さも、ノーラン独特の稀有な資質なんだろうね。