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アクト・オブ・キリングのymdのレビュー・感想・評価

アクト・オブ・キリング(2012年製作の映画)
4.5
レンズの力ってのはすごいもので、人はその眼前に晒されると《素》を失う。
生活の中における圧倒的な異物としてカメラは存在しているのである。
レンズを意識した瞬間、人は差こそあれ、取り繕う=演技してしまう。

だからドキュメンタリーが『映画』という手法を取る以上、そこに映される世界は事実を物語っていても必ずしも真実とは限らない。

ドキュメンタリー作家はそれを良く知っている。だから彼らはハナからノンフィクションだと思っていない。ドキュメンタリーとは台本の無いドラマくらいに思っている。

彼らが意識するのは事実を歪めずに、自分が求める真実を撮ることだ。やりすぎれば演出過剰で捏造となるから。

僕ら鑑賞者はそこを知っておかねばならない。

そしてこの『アクト・オブ・キリング』。
センシティブな題材にセンシティブな方向から切り込んだ衝撃的な内容ながら、映画の中で映画を作らせるというメタ的な手法で対象に対する中立的な立場を目指して作られていて素晴らしい。

殺人者たる対象たちはレンズを通して意識的に作る映画に過剰さを添えていく。
監督のインタビューも寄りすぎず、離れすぎない絶妙な間の取り方で彼の求める材料を掘り起こしていく。

単純に画としてインパクトのある映画だし、ユニークで鋭い切り口が全く新しいドキュメンタリーとなっている。

ラストの“嗚咽”をどう受け止めるべきか。
対象、監督、鑑賞者。それぞれが求める真実はどうなのだろう。