このレビューはネタバレを含みます
自分たちの過去になんら疑問を感じていなかった登場人物たちが、いかにもこの撮影を通して人間性を発露していき…みたいなものではなかった。
撮影してても自分たちの行いに全く疑問を感じていない人間もいるし、国を離れて住んでいるからこそ、撮影の意味を理解して、カメラに向かって罪を絶対に認めない人間もいる。
この映画は無知な人間が犯した罪を、映画の力を使って冷たく糾弾する映画ではない。
主人公となる男は、撮影当初からずっと悪夢にうなされていること、後悔の心境を口にしている。
どのような関係かはわからないけど、撮影前にはおそらく監督と主人公との間には心の交流はあったのだと思う。
彼が苦しんでいるのを知っていたからこそ、監督はこの映画の形を用意したとさえ思える。
冷たいだまし討ちの正義を誇示した映画ではなく、主人公の懺悔を手伝った作品、という方がしっくり来る。
自分が被害者を演じたシーンを孫たちに見せた後、監督とのやりとりで主人公が涙を流して気づきを訴えるシーンは深く心に残った。