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アクト・オブ・キリングのはせのレビュー・感想・評価

アクト・オブ・キリング(2012年製作の映画)
4.5
『最前線の映画を読む』で『ルック・オブ・サイレンス』を知り、先にこちらを鑑賞。

1965年。インドネシア軍上層部の将校たちが殺害され、スハルト将軍が軍事クーデターを起こし、独立の父・スカルノ大統領が失脚する(将校殺害の真相は未だに不明)。その事件を皮切りに、国内の文化人や知識人をまとめて"共産主義者"とひと括りにし、100万人を数える大虐殺が行われた。虐殺を実行したのは民兵組織プレマンだった。民兵とは言っても、実際はやくざやチンピラたちの集団で、軍人ではなく素人だ。彼らは「政府の命令」という大義名分のもと、"共産主義者"に仕立て上げられたご近所さんを次々と犯し、拷問し、殺戮した。スハルト政権は反共政権を後押しするアメリカや日本に承認され、その体制は現政権に引き継がれており、今なおその虐殺は「正しいこと」とされている。プレマンの殺戮部隊のリーダーたちは「国家の英雄」として讃えられ、地元の名士や議員となっている。
ジョシュア・オッペンハイマー監督は、かつての殺戮者たちを訪ね歩き、彼らをおだてて詳細な殺害方法を聞き出す。殺戮部隊のリーダーの一人であるアウマンに、「虐殺を映画にしないか」と持ちかける。彼らは自らを讃えるため、喜々として映画製作を行うが…

インドネシアの大虐殺が全世界に暴露された問題作。傑作ドキュメンタリー。好々爺達が楽しそうに殺人の記憶を語る姿は衝撃的。監督の視線の辛辣さと作中で製作されている映画のチープさの対比が印象深い。そして何より、「演技をする」という行動の特殊性を再認識した。たったワンシーンでも役割を演じるということが、演者の精神にここまで影響を及ぼすのか…
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